ゆず

音楽のゆずのレビュー・感想・評価

音楽(2019年製作の映画)
4.0
同じ音を同じ速度で弾いているだけなのに、その繰り返しがまるで原初的な衝動のような、最初のロックが誕生する生命の海のような、ビッグバンが起こる前の「揺らぎ」のような、そんなファースト・セッションが意味不明で最高で、ズルい。
音楽がこれで良いなら、これを音楽と呼べるのなら、俺だって今ごろは…とか、自作のクソ曲をYouTubeにアップしてる身としては嫉妬してしまう。
しかし、これは「ド素人の単純な演奏」をプロ・ミュージシャンが演じたからなんかイイ感じに仕上がってるのだと思いたい。そうでなければいたたまれない。

お話は最初から最後までシュールで面白い。
バンドの楽器構成すら知らないド素人であるからこそ、型に嵌らない演奏ができ、音楽をよく知る者ほどその意外性に舌を巻く。
フォークグループ「古美術」の森田は、主人公・研二たちの才能(?)に触れ、新たな地平の開拓をそこに見る。それはロックの生まれる瞬間。いや、何かが生まれる瞬間のことを「ロック」と呼ぶのかもしれない。
そういう意味では本作自体がとても「ロック」だ。
ロトスコープで作られたこのアニメーションは、カメラの激しい揺れすらも動画に落とし込む。めちゃくちゃロックだ。
ゆず

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