イホウジン

音楽のイホウジンのレビュー・感想・評価

音楽(2019年製作の映画)
3.9
青春音楽映画の最小公倍数

青春×音楽という何度も繰り返されてきた映画ジャンルでありながら、手書きアニメの衝撃の大きさと上映時間の短さの影響もあり大きな逸脱を感じてしまい否が応でも脳裏に焼き付く。絵を見るだけでも十分に楽しめるし、1時間強という短さはまるではテレビアニメの特別版ようである。アニメーションの幅の広さも今作の特徴とするのであれば、いわゆるアート系映画として評価されても良かったはずだ。
にも関わらず今作があくまで“青春音楽映画”としての支持を集める背景には、今作にその系統の映画のエッセンスが凝縮されているからであろう。通常であれば思春期やら恋愛やらで描写されるであろう「なぜ音楽を演奏するのか」という問いには、「ただ衝動に駆られたから」という答えで終始収まっている。演奏の上手い下手は物語に影響せず、スランプの描写は確かにあるが非常にあっさりしている。色んな要素を付け足すことで個性を出てきた青春音楽モノの世界の中で、今作は敢えて要素の徹底的な排除に進んだようだ。それゆえヴィジュアル等でインパクトを与えつつも、ちゃんと青春音楽映画として観客に受容されるのである。
楽曲の良さは言わずもがなである。セリフで語らせない分、その時その時の音楽の雰囲気で空気感が伝わってくる。

意外に登場人物が多いせいか、ストーリーの本流とは少しズレたようなシーンはいくつかあった。その割にメインキャスト勢のまとまりの無さもあるのが残念である。
間延びした映像も所々あったように感じる。
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