このレビューはネタバレを含みます
誰もが通った、もしくは今まさに通っている最中の大人への道。そのひと夏の映画だった。
翔が泰我にずっと「好きだ」と伝えるのは、常にくっついてくる関係性の名前を取り去った事実なのがよかった。好きだという事実を告げているから告白でもある。
関係性が固定されていないのは今の感覚かもしれない。
先生が「本は旅だ」と言って翔が読書を始め立原道造の詩が出てきたり、泰我もカミュの言葉と出会うシーンがあっていいな、と思った。けれど同時に引用過多な気もして、本を読むなかでどんな旅があったのか、あの煙突をさがしにいくまでの、さらに翔が旅に出るまでの様子が見たいとも思う。
言葉の旅から体感する旅に出て行く翔も、地元で自分の道を見つける泰我も応援したくなった。