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スターフィッシュのoceanmaxのネタバレレビュー・内容・結末

スターフィッシュ(2018年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

キャラクター配置や物語の流れは非常にミニマムだが、情報量が詰まった作品だった。
しかし最小限の説明と継ぎ目の多い編集が、作品のわかりにくさに繋がっていることは否めない。

本作は不安や恐怖を象徴するモンスターとの対峙が物語の推進力になっていると感じた。

モンスターは執拗に煽り立てるだけで、直接的にオーブリーを傷つけることはしない。
中盤にモンスターの恐怖に慄くオーブリーが、手を血だらけにするまで壁(モンスター)を殴るというシーンがある。
これは心の病それ自体が物理的な攻撃をすることはないが、それに影響を受けた肉体の反応や自分の行動によって自らを傷つけてしまう事を表現しているようだった。

また終盤には、今までとは違う巨大なモンスターが街を徘徊しているシーンがある。街(主人公の世界)を見守るかの如く佇むその姿は、畏怖と美しさを感じさせた。この時に見た巨大モンスターは、不安や恐怖のもう一つの側面、すなわち「それ」は自分自身を守るために必要な防衛反応でもあるということを描いているのではないか。

そして最後にはモンスターをただ直視して対峙することで、それを追いやることに成功した。
これはまさに認知行動療法やマインドフルネス的なアプローチで、心の喪失から回復しつつあることを見事に表現していると感じた。

ちなみに本作のタイトルであるstarfish=ヒトデは、再生能力が高く真っ二つになっても2匹になって再生するらしい。(Wikipedia「ヒトデ」より)
実はオーブリーもグレースも同じ人物で、一度は心が引き裂かれながらも生きることを選択した人間の物語としても解釈できる。

本作は何度か見返すことで新たな発見がまだまだありそうだ。
何より私にとって大事な作品になったことは間違いない。
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