友二朗

スターフィッシュの友二朗のレビュー・感想・評価

スターフィッシュ(2018年製作の映画)
3.3
「forgive +forget」

遥か壮大なセラピー。
実話に基づく怪物の世界。

ポストアポカリプス、誰もいない街にポツンと生きるオーブリー、亀、クラゲ、そして怪物たち。

オーブリーの心情をそのまま映像化した2時間。だからこそこれは誰も干渉する事の出来ない【実話に基づく物語】なのだ。

ヒトデ(スターフィッシュ)が切られた腕を再び生やすように、過去の闇に時間を止められた主人公の再生。

最初はオーブリーの見る幻想や夢のようなものが彼女を動かし、探し物を見つけ難を逃れているように思えたが、これはそんな風に単純化できない代物である。どこまでが現実かなど誰にも分からない。それは実際の世界でもそうだ。自分の心の中が一番分からない。

何が起きているか分からずパニックになっていたら、気づけば自分をオーブリーに重ね白銀の世界を旅している。

特に印象的なシーンがオーブリーがまさか『スターフィッシュ』の撮影現場に迷い込むシーンだ。これには鳥肌が立った。もはや自分ごと異世界に来てしまったのではないかと本気で心配してしまったほどだ。この多重構造は極めて斬新で映画の定義そのものに思い切り己を突き刺している。

穏やかな静寂と重く伸し掛かる緊張の繰り返し。本当に心臓に悪い。正直な感想を言うとここまで映像と無音に力を入れているのなら画の力だけで怖がらせて欲しかった。ホラーシーンのやたらデカい音響は本当にこの作品に合っているのだろうか。

にしても怖かった。怪物の造形も良かったし照明の使い方がいじわるすぎる。

ラストは素晴らしく美しかった。
最近観た映画で一番好きなラスト。

タイトルバック最高に格好良い。

物撮りや風景など素材の多用が丁寧で美しい。繋ぎの映像がいかに大切であるか見せつけられた。正に"世界"を撮っている。

星座の天体図破るシーン、映像かっこい〜。

グレイスとオーブリー髪色可愛い。

#1と#7の曲めっちゃ好き。

スタッフクレジットから小ささにこの映像制作に対する底知れぬ本気度が伺える。

監督のA・T・ホワイト自身が体験した離婚と友人の死。そこから山小屋に一人籠って書き上げた脚本だそう。なかなか強烈。

圧倒的な世界観を浴びた。
映画らしく、映画らしくない映画。

読んでくれてありがとう。

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"自分が何も学べないような
人間に出会ったことはない"
          ーガリレオー

「君は美しく激しい言葉」

「風を感じるかい?
 肌に触れる明星の風を」

「良かった」
「何が?」
「生きたいんだね」

「ただ受け入れろ」
前半のこの台詞、観客にも言っている笑

「このミックステープが世界を救う」

「自然災害や事故は
 信号によってループしている。
 各信号は曲に隠した。
 せめて楽しんで」
ここで何も分からずパニックになった。

「この体から抜け出したい」

「信号が完成するのを待ってたら?
 もし信号が僕らの世界を目指してたら?」

「私の夢は人間が消える事だった。
 空しい命と空っぽの世界。
 完全な静寂」

"海に戻る頃合い"

「死んで悲しいのは物語の消失。
 人は死ぬ生き物だが物語は残って欲しい」

「心だけ迷子。なんで?」
「自分が許せない。これは夢?」
「私は死んでる」

「これが現実だったらいいと思う?」
「ううん。ただ、外に出たくなかった」
「どうして?」
「だって、あなたが消えちゃう」
「私は死んだの。あなたは幸せにならなきゃ」

「幸せにならなきゃ。
 でなきゃ他人を幸せに出来ない」

「罪と向き合うの」

「ただの灰と塵になるなんて」

「今こそ声を上げて」
友二朗

友二朗