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ミッドウェイのYYamadaのレビュー・感想・評価

ミッドウェイ(2019年製作の映画)
3.6
【戦争映画のススメ】
ミッドウェイ (2019)
◆本作で描かれる戦地 / 共に実話
・1941年 真珠湾攻撃 (ハワイ)
・1942年 ミッドウェー海戦 (米領)
◆本作のポジショニング
 人間ドラマ □□□■□ アクション

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・1941年12月7日、日本軍は戦争の早期終結を狙う連合艦隊司令官・山本五十六の命により、真珠湾のアメリカ艦隊に攻撃を仕掛ける。大打撃を受けたアメリカ海軍は、兵士の士気高揚に長けたチェスター・ニミッツを新たな太平洋艦隊司令長官に任命。日米の攻防が激化する中、本土攻撃の脅威に焦る日本軍は、大戦力を投入した次なる戦いを計画する。
・真珠湾の反省から情報戦に注力するアメリカ軍は、その目的地をハワイ諸島北西のミッドウェイ島と分析し、全戦力を集中した逆襲に勝負をかける。そしてついに、空中・海上・海中のすべてが戦場となる3日間の壮絶な戦いが幕を開ける…。

〈見処〉
①勝者も、敗者も、海に全てを捧げた。
 エメリッヒが描く太平洋戦争——
・『ミッドウェイ』は、2019年製作の戦争映画。監督は『インデペンデンス・デイ』『ホワイトハウス・ダウン』のローランド・エメリッヒ。
・本作は、1941年12月8日の開戦以来、連戦連勝を続けてきた日本が初めて敗北し、太平洋をめぐる日米戦のターニングポイントとなった歴史的な海戦「ミッドウェー海戦」を描いた作品として、チャールトン・ヘストン、ヘンリー・フォンダ、三船敏郎が出演した1976年版『ミッドウェイ』に続き映画化されたもの。
・キャストはエド・スクレイン、ウッディ・ハレルソン、デニス・クエイド、パトリック・ウィルソン、ルーク・エヴァンズ、アーロン・エッカートらのハリウッド俳優に加え、豊川悦司、浅野忠信、國村隼ら実力派が海を越えて集結。

②ミッドウェー海戦
・ミッドウェー海戦は第2次世界大戦(太平洋戦争)中の1942年6月5日(米国合衆国標準時では6月4日)から7日にかけて、米国領ミッドウェー島付近で行われた海戦。
・真珠湾侵攻の反省を踏まえ、事前の情報戦を強化したアメリカ軍が、米空母部隊撃滅を目的とした日本の「MI作戦」を察知。同島攻略をめざす日本海軍を迎え撃つ形で発生。
・日本海軍空母機動部隊とアメリカ海軍空母機動部隊および同島基地航空部隊との航空戦の結果、日本海軍は投入した空母4隻とその艦載機約290機の全てを喪失するほどの敗退。従来の戦艦を中心とした艦隊決戦から、航空決戦の方針へと変更を余儀なくされた。
・また、アメリカ海軍も正規空母1隻と多数の航空機、200名の航空兵が犠牲になるという決して軽くない損害を受けたが、日本軍に敗戦続きのなかの国威発揚のため、米国政府はマスコミを総動員し、この勝利を世紀の大勝利のように喧伝。
・しかしながら、同時期に行われたアラスカ準州の領土の日本軍による占領など、アメリカ軍の後退は各地で続いたことは、あまり語られていない。本作を含め、ミッドウェー海戦が複数回の映画化に至っているのは、国威発揚の喧伝効果の名残かもしれない。

③ハリウッドと中国資本
・近年のハリウッド映画では、市場縮小傾向の北米興収を補填する意義合いも含め、中国資本の介入や忖度と捉えかねない演出の傾向が指摘されている。
・米ドラマ「24 TWENTY FOUR」による、中国をテロの黒幕とするような描写は、中国のGDPが日本を超え世界2位となった2010年頃からは消え失せ、中国が世界平和を牽引するような作品が台頭。
・本作と同じエメリッヒ監督の『2012』(2009)では、現代版「ノアの方舟」の建造を中国が担い、リドリー・スコットの『オデッセイ』(2015)や、ドゥニ・ヴィルヌーヴの『メッセージ』(2016)でも、中国の世界貢献が描かれている。
・極めつけは、マーベル・スタジオ製作の『ドクター・ストレンジ』(2016)。原作コミックのチベット系武道の老師エンシェント・ワンが、白人女優ティルダ・スウィントンに置き換えられ「映画資本によるチベット弾圧」という批判を浴びた。
・本作においても、製作費の多半を中国資本が補ったとされ、米軍が中国ゲリラに救出されたり、日本軍が中国に無差別爆撃を行うなど、ミッドウェー海戦と関係しない場面に一定の尺を割いている。
・これらの行き過ぎた?演出に、2020年にはトランプ政権下のバー司法長官は、ディズニーなどの企業が日常的に中国当局の映画検閲を受け入れるスタンスを批判。米国のNPO団体PEN Americaも、米国の映画スタジオの多くが、中国の上映権のため、映画の内容に修正を加えていると指摘。「アメリカ議会の保守派もハリウッド批判を強め中国にすり寄る映画製作会社への懲罰措置を検討している」とのニューズウィーク誌の報道も追随した。
・これらの環境変化により『トップガン マーベリック』の予告編では、劇中にトム・クルーズが着用していたジャケットから消えていた日の丸と台湾の旗が、劇場公開時には復活を果たすなどの変化めみられ、ハリウッドと中国の新しい関係性に注目したい。

④結び…本作の見処は?
「敵軍が宇宙人であれば、素直に楽しめる娯楽作品」と割り切ってのスコアリングが必要。
◎: 空母v.s.爆撃機…。空から巨大戦艦に迫る壮大な構図は、ディザスター映画の第一人者、エメリッヒ監督らしいスペクタクル溢れるアクション。
◎: 戦艦大和、空母赤城、飛龍など日本海軍の多数の艦艇が現代のCG技術で甦る。
○:「ミッドウェイで戦った日米の将兵に捧げる」…「米国の国威発揚テーマ」を「中国資本」で製作された本作であるが、移民監督のローランド・エメリッヒによる
20年に及ぶリサーチと労力により『パールハーバー』(2001)などと比べ、日本軍に対する配慮を残した跡が見える。
▲: それでも、永遠にアメリカと解釈の溝が埋まらない真珠湾攻撃の真実や、捕虜に錨を付けて海に投げ込むなどの日本軍の残虐性など、日本人として看過出来ない描写をそのまま受け入れることのなきよう鑑賞に臨みたい。
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