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ミッドウェイのsowhatのレビュー・感想・評価

ミッドウェイ(2019年製作の映画)
1.0
【日本人としてはこの映画から得られる教訓はありません】

主人公はアメリカ海軍の爆撃機のパイロット。
彼は勇敢で命知らずの西部劇型のヒーローです。
日本軍空母へ無謀な急降下爆撃を繰り返し、戦局を一変させるほどの大活躍。
モブたちは大勢虚しく死んでいきますが、ヒーローはもちろん死にません。
アメリカ人の子供たちはかっこいい彼に憧れて、みんな海軍に入隊することでしょう。

それはいいとして、日本人としてはこの映画から得られる教訓はありません。
慢心、油断、思考停止、権威への盲従。
この海戦には日本の悪いところが全部詰まっているはずですが、本作ではほとんど言及されません。
日本が3000人以上(アメリカの10倍)の死者を出して大敗北を喫したこの海戦は、立案の段階から迷走しており、まさに負けるべくして負けた巨大軍事作戦でした。

本作で豊川悦司が威厳を持って演じている山本五十六連合艦隊司令長官。
Wikipediaの山本五十六の項にはいくつかの興味深い記載があります。
・山本長官は海戦中、最後尾の巨大戦艦大和で将棋を指しており、空母「赤城」、「加賀」、「蒼龍」の被弾炎上という急報に対しても「うむ」「ほう、またやられたか」の一言だけをつぶやき、将棋はやめなかった。
・日本へ帰還後の作戦研究会でも「屍に鞭打つ必要なし」として、大敗北の責任の追及や敗因研究が行われることはなかった。
・ミッドウェイ海戦から約1ヶ月後、山本以下連合艦隊司令部参謀達は料亭で宴会を行い、着任したばかりの土肥一夫少佐によれば一同何事もなかったかのように陽気であったという。
・海軍兵学校監事長・大西新蔵中将は、玉音放送後、全校生徒を前に「ミッドウェー海戦で負けた時、Y元帥は当然腹を切るべきだった」と断言し、温情主義と情報の隠蔽が敗戦を招いたと指摘した。
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