Sari

宇宙の彼方よりのSariのネタバレレビュー・内容・結末

宇宙の彼方より(2010年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

ベトナム系ドイツ人であるフアン・ヴ監督「宇宙の彼方より」は、クトゥルフ神話の生みの親と称されるH・P・ラヴクラフトが1927年に発表したSF怪奇小説「宇宙の彼方の色」を原作とするホラー映画。世界初公開。

原作とは異なり独自の解釈で描かれ、舞台は1975年アメリカのアーカムという田舎町で、第二次世界大戦中にドイツに駐屯し失踪した父親を探す主人公の物語。
ドイツで父を知るナチス帰還兵と出会い男が過去を回想、父が見た同じ恐怖を主人公も体験していくといった物語。ある日、庭の井戸近くに隕石が落下した農家の夫妻が心身異常な状態に陥り、農作物は全て汚染され食べられなくなったというものである。

過去1930年代、終戦後の1945年、現在1975年と異なる時代で展開される独特の構成。敢えてモノクロで描くことで、あるカラーを際立たせている。ホラーだがジャンル分けしがたい怪奇的なムードのモノクロ映像、例えば、コミックのように作り込まれた背景、構図。エンタメ性を排除した淡々とした演出と、時代設定及び人物相関に混乱しつつ見終わった感がある。東欧のモノクロ映画を観ている感覚と近いかも知れない。

この映画で見た恐怖の対象を明確に表すのが困難な、終始陰鬱な雰囲気が恐ろしい映画である。解釈が難しいが、戦争という背景を描くことで、未知のものに対する恐怖は実は常に身近な存在であることや、環境破壊への警笛など現代人が観て考えさせられる内容である。

初回入場者プレゼントでもらったリーフレット2部(ポストカード付き)の内容が、パンフレット並に豪華でデザインも良い。

2023/09/10 シネマスコーレ
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