horahuki

宇宙の彼方よりのhorahukiのレビュー・感想・評価

宇宙の彼方より(2010年製作の映画)
3.7
『Color Out of Space』に向けて♫

何度も映画化されているHPラヴクラフト『異次元の色彩』をニコラスケイジ主演で映画化した最新作が面白そうなので、「最高のラヴクラフト映画化作品のひとつ」との呼び声も高い本作を。ちなみに本作の英題は『The Color Out of Space』で、同じく『異次元の色彩』の直近の映画化作品。

「色」を主題に置いた作品であるため、いかに色としての凄みを表現できるかが最も重要な要素になってくる。原作では「描写するのが不可能なもので、色と呼ぶこと自体、たとえにすぎなかった」や「識別も不可能な宇宙的色彩」といったように言葉による明確な表現を避けていたが、本作は映像である以上そういうわけにはいかない。

同じ原作を持つダニエルハラー監督の『襲い狂う呪い』ではドギツイ緑色をもって「宇宙的色彩」を描いていたけれど、本作の場合にはモノクロ映画とすることで日常の色を全て無くし、「宇宙的色彩」を作中で唯一の色として見せることで、対比的にその異常さを際立たせることに成功している。

原作では1882年のニューイングランドを舞台としているのに対し、本作では第二次世界大戦前後の西ドイツへと変更され、行方不明になった父親を探しにその地に訪れた主人公が、偶然知り合った行方不明前の父を知る男アーミンから聞かされる不思議な体験談が本編となっている。それ以外は基本的に原作準拠な物語で、落下した隕石が宇宙から持ってきた「何か」が村の平穏を少しずつ侵食していく様を息が詰まるような重苦しさで描いている。

隕石が落下したガードナー家の農場では農作物が例年よりも巨大化。しかし喜んでいたもの束の間、独特な苦味がありとても食べられるようなものではなく、全ての収穫が無駄になる。虫は巨大化し、母親が精神に異常を来し始め、更にはそれが息子たちにも及び、家族が少しずつ崩れていく。漠然とした不安を感じ取った村人たちはガードナー家を無視するように。唯一アーミンがガードナー家の世話を焼き協力者となるが、異常の進行は止まることがなく…。

原作はニューイングランドを舞台にしていることから、魔女狩りを少なからず意識したのだろうと思う。本作の場合には舞台的整合性はないけれど『襲い狂う呪い』と同様に核による汚染を想起させる。そう思うと時期的にも(カナザワ映画祭で去年公開されたとはいえ)日本未公開となったのも納得。

原作にはないサプライズもクライマックスに用意されているし、原作同様の嫌な余韻を残していくのも誠実。ニコケイ版はかなりぶっ飛んでるようだけど、見るの楽しみ♫ジャケから面白そうな予感しかしない!
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