まる

犬王のまるのネタバレレビュー・内容・結末

犬王(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ずっっと素晴らしかった……。
初めに現代から始まり時代を遡っていくシーンからもう圧倒されてた……。その構成も予想外だったし、風景の表現力も圧倒的だった。
現代のシーンが、雨降りの夜の交差点というのも印象的だった。
平家物語見てたので、繋がる所がたくさんあって感慨深かった。あの人たちが懸命に生きたことを伝える、祈りの物語だった。これもれっきとした平家物語。アニメのびわとは違うアプローチだったけど、そりゃあれほどの大作やと色んなアプローチもあるわねと思った。

平家の呪いを背負わされながらも、腐らずに真っ直ぐ楽しんで生きてた二人が眩しく感じた。
友魚が見てる景色の表現も、触れたとこから鮮明になる描写も、全部素晴らしかったな。なによりずっと、景色の美しさが光ってた。普段見もしないけど、自然ってあんなに美しいのかと再認識できた。美しすぎて"ありがたさ"まで覚えた。
雨の描き方も素敵だった。
松本大洋さんの絵のタッチとマッチしてた。
あと、友魚は目が見えないからこそ、人の魂や本質が見れるんだろうなと思った。
見えないからこそ色んな音を丁寧に掬い上げるセンスがすごかった。友魚が見る世界がすごく美しかった。
友魚は、親も師匠も良い人で周りの人に温かく育てられたんだろうけど、犬王はほんとに対照的だった。でも真っ直ぐ生きてこれたことが、犬王自身の素質なんだろうな。
犬王、足が戻ってからもしばらく赤い着物着てたの、たぶん初めにあの着物を与えられて以来、他の着物貰えなかったからなんだろうな。そして暫くは自分の稼ぎもないから、あれしか着るものがなかったんだろうな。

二人が出会って初めてセッションするシーンが大好きだった。満点の星空に抱かれて、何にも縛られず自分達の思いのまま、無限に拡がる宇宙のように、あの二人もまた可能性も無限なんだと思った。だからこそ時空も越えられたんだろうな。

音楽のシーン、バンドのライブ見にきたんかなと思うくらい迫力があった。何より友有座が魂込めて作り上げたものだから、見る者の魂を揺さぶる力がある。友有座の在り方は、結構現代に近いものを感じた。
人気が高まるにつれステージの技術も凝ったものになるのも面白かった。
歌ってすごいなあと思えた。
沢山の人に知ってもらえることで成仏できるというのも、沁みるなあと思った。
時代の波を動かすのって、結局民衆なんだなあ。上がどれだけ策を尽くしても、民衆の熱量は抑えられないんだと思う。
楽器の音が大迫力なんやけど、二人の言葉が聞きづらくて悔しかった。あの二人がなんて言って語り継いだのかというのもちゃんと知りたかったなー。
あと、ロックって心を揺さぶるからRockなんだなあと……。

最後のステージも本当に圧巻で……。
建築物の美術もすごいし、そこを通り抜けていくカメラワークも素晴らしかった。
そしてちょうど日食が起こったのも神秘的だった。木漏れ日の光の形が変わっていくのも、本当に素晴らしかった。あの時代で日食のタイミングを計算して日程決めれたとは思えないので、すごく大きな力が味方したんだなあと感じた。
色んなジャンルの曲で楽しめた。歌がうまいし楽器もうまい……。
最後の最後、成仏するための引き金引くのは、友魚や犬王の人生なのか……。
友魚が自身の過去を振り返るときに海に潜って、同じ海の先で犬王の母の子宮に繋がる構成もめちゃくちゃ面白かった。
犬王の親、可哀想なほど己の美に囚われてた。そういうところは平家っぽい。弾け飛ぶ所はほんとにグロかったけど、呪われた者の最期ってたぶんそうなるんだろうな。因果応報。
魂が竜になって吹き抜けていく所、大好きだった。犬王や友魚に感謝してるようにも思える。

音楽のジャンルや細胞のシーンとかで、現代と交錯してるのも面白かった。

その後の友有座の運命はかなり辛かった。シビアな現実だな……。
腕切り落とされようが最後まで琵琶法師を貫いて、壇ノ浦の友魚として死んでいく姿、本当に真っ直ぐだなと思った。志に生きたんだね。
犬王はそれでいいんか?!と思ったけど、豪華な衣装着ていいステージで桜吹雪の中舞ってても、楽しくなさそうに見えた。無音だったのも印象的だったな。そのまま犬王の心情のようにも思える。
でも犬王の人生振り返ると、人から温かい愛を受けれなかった人は自分の心殺してでも人からの評価を大事にしたくなるんかなと思った。それともシンプルに、 友魚たちがいたことを後に証明するために舞い続けたんかな。
大人になるにつれ、しがらみが増えていくのも現実だな……。

最後に現代に戻ってくる所痺れた。そこで繋がるんや??!と思った。
友魚、成仏できてなかったんやね。犬王も成仏できず、現代の何処かで友魚を探して彷徨ってたんだね。名前で魂を辿るって素敵だと思った。
そして友魚は、最期の場所(?)でどしっと構えて歌い継いでたのもかっこいいなと思った。
戻るのは、出会った頃の二人なんだね……。そしてまた星空でセッションしてて、感慨深い……。
私たちがあの二人の物語を知ったことで、あの二人は成仏できたんだね……。

なんかもうすごいなあ〜……。本当に圧巻だった。アニメーションであそこまで描けるんだ??!というのも驚いたし。
平家物語も犬王も、本当に素晴らしかった。
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