しゅう

犬王のしゅうのレビュー・感想・評価

犬王(2021年製作の映画)
3.7
原作未読。

序盤は、かなりワクワクさせられた。

未だ南北朝の争い収まらぬ時代、申楽一座の疎まれ者と草薙剣で盲目となった琵琶法師、二人の少年が京六条の橋の上で出会う。

水墨画を思わせるアニメーション表現は重厚かつダイナミックで、TVアニメ『平家物語』を更にブラッシュアップした様な映像クオリティは観ているだけで心地好く、「これからの本格時代劇は全てアニメーションで製作すべきだな」などと悦にいる。

ところが、中盤主人公二人を中心に立ち上げられた犬王一座が六条河原で演じる舞台と観衆の盛り上がりは、まんま既存のロック文化、ダンス文化、オーディエンス文化の丸写しに過ぎず、少なからず落胆させられる。

実際、室町時代に現代のポップカルチャーが出現すればそれは途轍もなく斬新に違いないが、こちらは現代の観客なのだから如何に美しい映像表現で盛り上げようと、そこに驚きや興奮は無い。

自分は歴史の陰に"ありえたかもしれない“未知なる異形の芸能が立ち昇る姿を見たかったのでどうにも不満だが、寧ろこれは中世に舞台を借りたロックオペラなんだと割り切れば悪くない出来だとも思う。
しゅう

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