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犬王のyawaraのレビュー・感想・評価

犬王(2021年製作の映画)
4.5
ふたりの異才の運命とも言えるような出会いと、彼らが人々に熱狂を巻き起こしていく様子を描く。

主演両名の、あえて声優でないキャスティングに驚く。あまりにハマっていて、鑑賞後にはこれ以外にあり得ないと言っていいほど納得感がある。やはりと言えばいいだろうか、女王蜂のファンである自分としては歌のパートでその美声ぶりと表現力に痺れてしまった。
多種多様なジャンルを複合したような楽曲もたいへん迫力に溢れて、ライブシーンは音楽と二人のパフォーマンスの競い合いといった趣がある。もうこれだけでお腹いっぱいになれるくらいには楽しませていただいた。

作品の特色とも言える犬王の異形に関して自分の解釈を述べたい。
親に見放された理由を彼は自身の外見に求め、面を外せずにいた。異形は盲である友魚の視点ゆえの想像の産物であり、互いの理解を深めるうちに最後には彼の真の姿を思い描けるようになったのではないかと感じた。犬王が面を外せたのは、自分の過去と向き合えたからでなかろうか。(原作未読なので、ツッコミお待ちしてます。)
あくまで解釈の仕方は色々ありそうで、想像の余地が作品の魅力に転じているように思う。

諸行無常をテーマに据えて、ふたりの人生にしっかりとフォーカスした構成が見事。家族との問題や自己実現、コンプレックス、社会との接点などで生じた心の傷を昇華してくれるような優しさを内包した作品。

呪いの面の邪悪さやカラフルでドラッギーな演出にたいへん湯浅監督らしさを感じて嬉しくなってしまった。
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