おなべ

犬王のおなべのレビュー・感想・評価

犬王(2021年製作の映画)
3.7
◉監督《湯浅政明》× 脚本《野木亜紀子》× キャラ原案《松本大洋》× 音楽《大友良英》という、観に行かない理由が見当たらない豪華すぎる製作陣。そこに新世代のロックバンド「女王蜂」のボーカル《アヴちゃん》と、実力派俳優の《森山未來》が声優が加わり、総じて、未だかつて類を見ないほど熱狂的・且つ芸術的な作品に仕上がっていた。

◉《古川日出男》の原作「平家物語 犬王の巻」を、アニメーション映画化。歴史から抹消された伝説の能楽師〈犬王〉の栄枯盛衰を描く。

◉時は室町。琵琶法師の少年・友魚は、強力な平家の呪いにより盲目となり、父を失った。呪いの真相を突き止めるべく旅に出た友魚は、とある町の橋上で、瓢箪を被った異形の者・犬王と出会い…。

◉先ず、作画の面白さに衝撃。『鉄コン筋クリート』『サマーウォーズ』『進撃の巨人(アニメ)』を観た時の衝撃を彷彿とさせる作画。縦横無尽に歌い踊りあぐねる登場キャラの熱量や溢れる感情が画面越しに伝わってくるような、生き生きとした作画に高評価。

◉耳に残る印象的な音楽も、面白作画と相性抜群。室町という古典の時代背景とロック調の音楽の組み合わせは、ミュージカルアニメの枠組みを越えた、逆に新しいエンターテインメントの形を確立したと言っても過言ではない。

◉そしてなんと言っても、《アヴちゃん》と《森山未來》の力強い歌声は圧巻。作画や音楽、物語が強烈なぶん、力負けするかと思いきや、それらに引けを取らない圧倒的な歌唱力。役作りなどがストイックで有名な《森山未來》は言わずもがな、恥ずかしながら本作で初めてその名を知った《アヴちゃん》の今後の活躍に注目したい。

◉ただ、古典ならではの時代設定は、教養のない自分からすると少し複雑に感じ、完全に物語に没入出来なかったのが本音。古典芸能や時代背景など、専門的な知識があると、より一層楽しめるかもしれない。
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