NM

犬王のNMのレビュー・感想・評価

犬王(2021年製作の映画)
3.4
女王蜂/アヴちゃんが好きか、音楽映画、ロック、ミュージカルが好きな人などにおすすめ。歴史や文学は知らなくても診られるはず。
絵のタッチは和風っぽいけどストーリーや演出は現代風、音楽はほぼロック。
最初こそ我々の知る平家物語の続きだが、その後は今までにない歌や舞いをみせる謎のスターが一世風靡していく。
物語は歌われるため、しっかり歌詞を聞き取る必要はある。適当に観てしまうと置いていかれる可能性もある。
実在はしたが謎に包まれた人物である、犬王がモデル。

---
二人の少年が出会った。
会話するよりも前に、琵琶と舞いでセッションし、通じ合った。

一人は壇ノ浦の漁師の息子、トモナ(のちにトモイチ→トモアリ)。
幼い時三種の神器を見てから盲目となった(神器には直接見ると目がつぶれるという伝説がある)。
これは正式な朝廷となるため三種の神器を一つでも欲しかった義満の差し金で海から引き上げた、草薙の剣。
何も知らないトモナはこうなった所以を知るため旅に出た。
そして路上で平家物語を歌う琵琶法師に出会い、弟子入り。

もう一人の少年。
猿楽(のちの能のこと)の一座に化け物のような姿で生まれ、名前すら付けてもらえず犬とともに育てられた。顔も異形なので常に仮面を付けている。
しかし彼にはずば抜けた身体能力と人並みでない感性があった。
舞いの稽古を盗み見て、こっそり真似してみるとなぜか異形の体が普通の人間に一つずつ近づいていく。教えてくれる人などいなかったから自由に踊った。
やがて彼は犬王と名乗った。
どうやら犬王には平家の亡霊が無数に取り付いているためこのような姿だったらしい。だから犬王がその思いを表現してやると彼の呪いが解かれていくのだった。

トモイチは更にトモアリと名を変え、旗揚げ。
二人の人気はうなぎのぼり。
猿楽座の看板である父親は、今まで犬扱いしてきた息子に人気を出し抜かれた状態で悔しい。

それに今ある平家物語を正本として三種の神器も入手し自分たちを正当な朝廷としたい足利氏には、二人の平家物語の人気は甚だ迷惑。

犬王を失脚させたい彼らの思惑により、二人は義満とその正室の前での舞いに呼ばれたが、舞台の最後に仮面を取るようにとの条件付き。
これまで体の異形は美しく変化してきていたが、顔だけはまだ変化がない。

舞台はどうなるのか。
そして二人の生い立ちの真相は。この物語にはもう一つの呪いが関わっていた。

---

観客が縦ノリで頭を振ったりブレイクダンスを始めたりして自由な世界観が楽しい。
最初はこの映画がどうなっていくのか驚いていたが、アヴちゃんの歌が良いし、何より二人の運命が気になって観てしまう。特に拾いが本当に間に合うのかどうかは手に汗握る。
ストーリーは、一旦成功したかと喜ばせておいてがっかりさせられたところがいっそう無念だった。最後いい風な終わり方をしてるけど正直個人的にはやっぱり悔しい。

何よりアヴちゃんと森山未來がすごい。彼らがいてこの作品ができた。
個人的には義満役柄本佑の並々ならぬ権力者且つ執念の持ち主なのに口調が単調でしれっと酷いことを言う、公家っぽい雰囲気が好みだった。
NM

NM