結局カレー

犬王の結局カレーのレビュー・感想・評価

犬王(2021年製作の映画)
3.7
現代から一気に時代を遡り気づけば室町の京の都まで連れていかれるオープニングにいきなり引き込まれる。猿楽一座に生まれた獣のような人のような犬王と盲目の琵琶法師、2人の生い立ちと出会い、駆け上がるスターダムとその散り際までを描いた作品。「2人のポップスターが600年を駆ける狂騒のミュージカル・アニメーション」のコピーはまさに。名のない犬王と複数の名をもつ友魚は対等であり対極であり。

中盤以降結構長尺のライブシーンがあるけど退屈させない歌と画。女王蜂のアヴちゃんが「自分がやらなきゃいけない役だと思った。」って言ってたけどその通りだった。唯一無二のボーカリストであり、その存在感は犬王キャスティングの最適解。やんちゃで若干ハマジ感あるワンパクな少年期からエキセントリックなようでまっすぐ麗しい声の青年期まで見事だった。森山未來も”普通”なんだけど犬王に劣らない力強さがある。湯浅監督の常軌を逸した感じの演出が作品によっては私は「?」ってなることあるけどこれはいい融合だった。監督・脚本・キャラクター原案・音楽・キャスティング、全方位強し。

2人の人生こそロックの真髄であり2人の生き様に群衆は熱狂する。Queenぽいってコメントを観て確かに、とも思ったり。プライドを守るために差し出す命もあれば、命を守るために差し出すプライドもあって。都合の悪いものは簡単に消されてしまう時代に抗って輝いた強さと「此処に有る」と生きた証を誰かに託すような儚さに夢中になった。カッコよかったなぁ。