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ドリームプランのbluebeanのレビュー・感想・評価

ドリームプラン(2021年製作の映画)
3.5
素直に観ると良くできた感動サクセスストーリーなのですが、どうにも引っかかる点が多い。

まず徹底して父親リチャードの主観から描かれていて、娘たちへの視点の移動が無い。彼の強権的な支配に対して娘たちが反発しそうなシーンでも、なぜかみんな素直に明るく従う。最終的に成功したから良いものの、そうでなかったら単に自分の理想を押し付ける妄想野郎なのではないか?という疑問。リチャードが黒人差別との戦いを語りますが、作中で実際に白人から差別されるシーンが一つもない。

例えば『最後の決闘裁判』など、ある出来事を複数の登場人物の視点で繰り返し見せて、個人のエゴでいかに物事の見方が変わるかを描く「羅生門」スタイルの作品があります。ふと本作が、本来その形式を取るべきストーリーでありながら、リチャード視点のパートだけで構成されたものではないか?と思い立ってゾッとしました。

後で知りましたが、英語のタイトルはKing Richardで、それがシェイクスピアの描く暴君リチャード3世を連想させるものだそうです。ますます怖い作品です。
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