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生きるのcamusonのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
2.7
とある役所の寡黙な市民課長が主人公。
癌で余命幾ばくもないことを悟り、
これまで何も為し得ていない自分の人生を振り返り狼狽したり、
無断欠勤して遊び歩いたり、
心を入れ替えて市民のために仕事をしたりという話。

お役所仕事(仕事のたらい回し)の風刺になっていて、
時代劇が多い黒澤明の作品の中では異色の部類だと思います。

しかしながら、時代を経て労働の質が大きく変化している中、
さすがに今の時代では通用しないテーマだなと思ってしまいました。
(縦割りと責任回避はいまだにどこにでもありますが)

本来的には、喜劇的な要素をちりばめつつ、
余命の限り市民のために奔走して仕事を為した男の生き様を示し、
そういった仕事ができない現状(当時)に一石を投じているのだと思います。

ですが、今になっては、単純化、戯画化が過ぎていて、
わかりやすいのだけど、深みやリアリティがなく、
なんか、すべてが喜劇に見えてしまいました。

主人公以外の登場人物に苦悩がまったくなく、
深く考えない大衆役を演じさせているのも、
通り一辺倒でダイナミズムを感じさせません。
結果、ちょっと説教臭い感じが目立ってしまいます。

なぜ、主人公が人が変わったように仕事に打ち込むようになったかを、
葬式の参列者が議論するくだりも、すべてが説明台詞になっていて、
「癌であることを知らないはずなのに、なぜだろう?」
などと延々とやってるのも、そらぞらしくて、何だかなと。

映像作品としては丁寧につくられているので、
昔の繁華街はこんな感じだったのねとか、
飽きることなく楽しく見られました。
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