LEO

生きるのLEOのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
5.0
『生きる LIVING』に向けて予習。
ほとんど観ている黒澤映画の中で、しかもビッグネームの作品の中で一度も観ていなかった作品。

機械的にただ黙々と決裁印を押し続ける毎日を過ごしていた市役所の課長が、自身の胃癌宣告をきっかけに本当の意味で人生を“生きる”こと知る話。

今となってはありがちと言えばありがちなストーリーだが、演出と志村喬の演技が凄い!
主人公がやる気を出した途端に彼の結末がすぐに描かれる。
そこからそれぞれが思い出すシーンがたびたび挿入され、それによって周囲はどう主人公のことを思うのかを描いていく。
『羅生門』の手法をここで使いますか!って感じ。

それに、病院でのお喋りオヤジにしても焼香に来た主婦達にしても、直接多くを語らせず表情のみで観客に全てを悟らせるのもさすが!
つまらない作品は全て台詞で喋っちゃうからね〜。

更に志村喬は終始もごもごとした喋り方と大きく見開かれた絶望の目によって、言葉にならない心情を見事に表現。
加えて慟哭、歌い方、“生きる”事を見つけた後の表情によって、幸せとは、家族とは、生きるとはと色々なことを考えさせてくれる。

戦後からまだ数年しか経ってない中で作られた、本当に素晴らしい作品である。
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