たにたに

生きるのたにたにのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
4.3
【いのち短し恋せよ乙女】2023年34本目

人間いつ死ぬか分からない。
残りの人生が短いと知って初めて、"今を生きること"の大切さに気づく。

志村喬演じる渡邊課長は、積み重ねられた資料にただ印をして、終業までの時間を無駄に過ごしている。
近隣の下水や蚊の発生による子どもたちへの悪影響を問題視し、役所に訪れる地域の住民は、様々な課にたらい回しされ、堂々巡りの無意味な時間を費やしている。

渡邊は自分の寿命を知り、自暴自棄になって酒を飲み、そして女遊びをして仕事を欠勤し続ける。構ってほしい息子にはお荷物扱い。一体私の人生とは?

部下の女性社員とカフェでコーヒーを飲みながら楽しく呑んでいると聞こえてくるハッピーバースデーの音楽。歳をとる若者とは対称に死期が近づく渡邊の対比はなんとも言えない虚無感を生む。
それをまるで消し去るように渡邊の心に芽生える強い意志。下水問題を解決して公園を作ろうと。

未来の子供達の安全のために彼は動き出し、そして反社の男たちの圧力にも屈しない鋭い眼光。彼に怖いものなど、もうないのである。何も成し遂げずに死ぬ方が怖いのだ。

映画の中盤から、彼の死後が描かれ、役所職員達のあれやこれやのくだらない見栄と虚栄の数々が語られながら渡邊という人間の人生を映し出していく。

日本特有の謙虚さも描きながら、上辺だけで判断する愚かな思考しかできない自己保身の人生をくだらなく描く。
他人を嘲笑う前に自身の人生を顧みる。

自分にはどうせ無理だ。。
そう思う前に渡邊のように、口下手でも、とにかくアクションしてみる。
人間いつ死ぬかなんてわからないんだ。
だったら、今できることをやろう。

目立たない人生だって素晴らしい。
やれることをやってみよう。
たにたに

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