前半部は主人公がいかに自分と向き合い生まれ変わるかと言うことが主に置かれ、後半部はいかに官僚的な社会が死んでいるかに焦点が当てられていた。
脚本として、生まれ変わった主人公が奮闘する所を直接的に表さないのには驚いた。
恐らく周囲の人物が主人公の行動を回想する形式にしたのは、主人公がいかに生きたかと言うことと、それを語る役所の人々がいかに死んでいるかというのを強調するためだったのかな。
この映画は画がとても美しく感じた。特に人物の構図、物の配置にはすごく気が配られているように感じた。
例えば、微妙にずれた市民課長の立て札や前半部で誰かと対話する場面に必ず間に置かれてた目立つ人や物、これらはそこに生きる人物が自分と向き合わずにいる事を表しているように思った。
最期のジャングルジムをフレームに見立てて、それごしにブランコを漕ぐ主人公の画もよかった。
そしてなんと言っても志村喬さん、あんなに顔で色んなことを語れる役者は初めて見た。台詞自体はそれほどないのに、あれだけ人間を表現できるのはすごい。この方でなかったらこの映画はこれほど面白くなかったと思う。
音響は前半部に派手で分かりやすい所が多かったが、それも人間喜劇っぽくてよかったと思う。
全体として、シニカルかつシュールなユーモアもあってとても好きな映画でした。
最初のナレーションを聞いたときにはそんなに語るんかと驚いたけど、それもあれだけの物が撮れるなら納得できる。
まさに映画という映画だった。