アーリー

生きるのアーリーのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
4.8
2023.12.27

ビル・ナイ主演のリメイクが出た時から気にはなってた。黒澤明が描き続けた一般の人々によるヒューマンドラマの完成系。

突然死を宣告される、または意識すると人はどうするんやろう。間違いなく過去を振り返る。自分がどれだけ時間を無駄にしてきたかを嫌と言うほど自覚するんやろうな。いつか終わりがあるのはみんな知ってるけど、日頃から意識することはほぼない。突然終わってしまう可能性がある中で、それを忘れてだらけたり楽な方に逃げたりする。意識して無駄な日を作るとか、楽な方に行くのは全然構わない。自分の生き方に自信を持っているかいないか。それがすごく大事。

話の作り方が面白くて、前半は志村喬が自暴自棄になり、そこから残りの時間を精一杯生きる希望を見出すまでを丁寧にたっぷり描く。さぁここからと言うところでカットが変わると、まさかの通夜のシーンに。公園を作る過程はほぼ描かれず、通夜で同僚たちが話し合いながら、回想のように少しずつ志村喬が何をしたかがわかっていく。雪の降る公園で一人、ブランコを漕ぐ姿。そこまでの持っていき方が素晴らしい。そしてそんな彼の最後の生き様を知った同僚たちが、結局変われないというラストに役所や官僚への批判を感じる。彼らにも色んな事情があるんやろうけど、それでもダメなものはダメと言える黒澤が好き。
息子夫婦との関わりもそう。親を蔑ろにしてしまうのはよくわかる。亡くなってから後悔しても遅いというのもわかるっちゃわかる。こればっかりは仕方ないのかな。ちょうどこの年末のタイミングで観れたのは凄い良かった。久しぶりに実家に帰って、おばあちゃんにも会いに行きたい。地元の友達にも会いたい。どうせこのまま会う頻度なんか減っていく。だからこそ今会えるという状況を最高に楽しんでいきたい。

凄いよかった。お涙頂戴という感じでもなく、心に響く作品。音声の聞き取りづらい部分があるのがとても勿体無い。なんかどうにかならんかな。
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