蒼空

生きるの蒼空のネタバレレビュー・内容・結末

生きる(1952年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

1952年

生きる=死

お役所仕事をデフォルメした表現とはいえ本当、たらい回しで向上心ないなあ、と思う。(今でもそう感じると言うことは、ずっと体勢変わらず?)

誰より事勿れ主義の主人公は、ミイラとあだ名されていて生きる屍だったけど、本当に屍なると察する。この、なんとも言えないキモい目つきがいいんです。
黒澤明なんとも言えない笑いがある。傍観者は笑ってしまう。

当事のニュータイプの事務の女の子は、面白くないから市役所辞めるといい、ハンコの為だけに課長に会いに行くが結果「会社に行かず若い子夢中」と周りは勘ぐる。居酒屋では味がありすぎる小説家に金の使い方、遊び方を教えてもらう。1952年の東京の魅力的なことよ。パチンコ、おしゃれなBar、ダンスホール、赤線地帯、流れる音楽。
課長は市役所をやめた女の子シツコク会いに行くが、それは恋というより「なぜいつも生き生きしてるか」という生きるコツを学びたいようだ。女の子はモノを作るっていいことよ、という。課長は今、自分にできる事を閃く。
その時、店内に「Happy Birthday 」が流れる。今、課長は生まれ変わったのだ。(エヴァンゲリオンみたいだ)

課長がミイラみたいになったのは、子供が小さいのに妻が死に、息子のミツオ(金子信雄というにでびっくり)を大事に育て戦争からも無事帰って来て、ミツオを心底愛していて、生活の安定のためなら自分のポジションは死守したかったからだろう。(給料と退職金のため)に。)

生まれ変わったと思ったら、映画ではいきなりお葬式となる。
どう死んでいったのか。どう生きたのか。

お葬式に集まった人々の会話劇となる。
浮かび上がる、成功の手柄はエライ人に、課長の功績はなかったことなる。
お葬式の終盤には「課長の死を無駄にしてはいけない」などと調子いいことを言い出すが、翌日は1人を除き皆、いつも通り何もしないお役所仕事をする。

課長は人に怒ってるほど時間があるわけじゃない、と今やる事に集中していた。
告知をしない時代に自分の死を受け入れるのはなんのケアもないから辛かったと思うが、彼が泣き顔で生きる決心をしたのは本当のところなぜだろう。

人は死んでいく時は結局は1人だ。
ミツオにも本当のことは言わず公園で寒い夜を迎えたのはなぜか。

定年 多分55歳なので課長は50代前半だけど、昔の人は老けてる。

課長は「生きた」のかな。



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