黒澤明のスゴイところは、人間の汚い部分とか、嫌らしい部分とか、兎に角普段は人前に出さず、内面に潜ませているドロドロした感情を作品中で抉り出しているところなんですよね。
部下の手柄を横取りしようとして、それがバレて気まずくなる上司とか、
義父を煩わしく思う嫁とか、
生々しい人間模様を描きながら、
これでもか、これでもか、とえぐるえぐる。
映画は、胃癌を悟った市役所勤めの主人公が無為に生きてきた人生を悔いて、快活な女子職員に羨望の眼差しを向けながら、生きる意味を探して足掻く前半と、
主人公の葬式で、故人について語らう遺族や職場の上司・同僚の会話を綴る後半。
見どころは後半。
葬式の翌日を描いたクライマックスはカタルシス。
痛烈なお役所仕事批判。
あの一節を描きたいだけのために、長編の映画にしたんじゃなかろうか?
誰かのために何かをする、って事に意味を見出す瞬間って、あんな時くらいのものだし、熱しやすい感情は一晩明けたら、すぐに冷めるよね。
無常。