ロンビュー

生きるのロンビューのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
3.7
与太話のような展開で社会を皮肉しながらも、余命宣告を受けた男の心情を繊細に描いた映画

その言葉の通りこの物語では主人公が胃癌になります。この映画を通して自分に余命が少ないと気づくことがあればどうするだろうと考えました。生まれて大体80年生きると思っていたら半年だと言われたらどう生きるだろうか。溜め込んだ夏休みの宿題みたいに急いで消費しないといけないのは嫌だという気持ちになることが出来る映画だと思いました。実際に主人公の渡辺は最初は道楽を楽しみ、その後公園作りに尽力しました。つまり、楽しむこと=幸せでは無いのかもしれません。

同時に、この映画は黒澤明の転換点だとも思います。この後に『七人の侍』を監督し、その後も時代劇を多く作りました。監督が生きた1950年代を映すものは割合的に減ったと思います。それはこの映画の完成度によるものだとも思います。それくらい良い作品でした。

小田切さんは安定を求め変化のない市役所のやり方に嫌気を感じ、好きに生きていました。それが変化を求めない渡辺さんには魅力的に見えました。その小田切さんの明るさが良かった。

この映画では、市役所内のそれぞれに縄張りのようなものがあり、それぞれで威張りあっています。なので渡辺さんが管轄を超えて公園作りに尽力していたことを認めません。ですが、彼らが渡辺さんの思い出話をするとこで局が繋がったことを浮き彫りにするという何とも滑稽な展開でした。同時に渡辺の生き様が感動でした。

パチンコ屋で猿みたいに喜ぶ小田切さんが好きです。
ロンビュー

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