このレビューはネタバレを含みます
死を前にして、生き始める。
死ぬことはやっぱり生きることなんだね
市長に逆らう時、
ヤクザに絡まれてニヤッとした時、
公園でブランコを漕ぐ時、
彼は生きていた
念願の黒澤明作品
「カットが美しい」の意味がようやっとわかった
病院で渡辺さんがこっち向きながら斜め後ろでおっさんがビビらせてくるシーンや、ブランコに乗る渡辺さんをジャングルジムを通して撮っていく所は鳥肌がたった。
なんて効果的なんだ
白黒の力強さも、渡辺さんの顔の表情や陰影を通じて知ることができた。うれしい
会話の自然さと豊かさはパルプ・フィクションを見ている時に覚えた感情に似ていた。
ノーラン以上に見せる時間軸の操作がテクい。「生き」始めてからすぐ葬式ってのぁ驚いたけどなるほど効果抜群な時間軸。
戻ってきたら皆が遺影を覗き込んでいたりと、回想からのトランジションもとても上手
自分が言いたいことを言うためだけの会話や、「話の腰が折れる」瞬間などをあそこまで美しく映像化するのってすごい
ゴジラ-1.0を観たあとだからなおさら演技力に驚かされるし「こんなにじっくり会話を描けたんだね、日本でも」と少ししみじみ
終わり方もなかなかに風刺が効いているというか、悔しさが残るというか。
生きるってことは何かを作るってことなのかな、なんて。