1944年(昭和19年)木下惠介が陸軍省の依頼で製作した戦意高揚映画のはずが、見終わると戦意高揚しない。
「ストーリー展開もキャラクター設定も、情報局の求める展開から外れてはいない。」しかし、細部の描写は、当局が不許可を出せない範囲内で少しずつ外れていき、結果として、木下は情報局から「にらまれ(当人談)」終戦時まで仕事が出来なくなったと言われている。
反戦の気持ちをひた隠しに隠して、隠し切れなかった映画。
国策映画を観る機会はあまり無いので、当時の人たちがどんな教えとか、考えを聞かされていたのか、どんな風景や空気の中で暮らしていたのかを少し覗き見たような気がした。
福岡を舞台に、幕末に父が、日清・日露戦争には息子が、太平洋戦争には孫が戦争に参加する約60年を描いた作品である。
笠智衆
田中絹代
東野英治郎
上原謙
杉村春子
の若い頃が見れる。
この10年後に撮ったのが、『二十四の瞳』。
二本立てで観るとまた味わいが深まる気がする。