ジャンでヴァンダムな週末の夜、先週末にお休みしてしまったぶん、とびきりヴァンダホー!!なジャン・クロード・ヴァン・ダム映画をお届けしましょう!
タイトルは「HELL」!
そう、地獄ですね!
何の捻りもない直球すぎるタイトルですが、この世の地獄のようなロシアの刑務所を舞台にしたお話であります。
以前にご紹介した「ブルージーンコップ」は、お気軽でおバカな刑務所映画でしたが、本作は非常に重っ苦しい雰囲気のお堅い刑務所映画な仕上がり。
監督は「マキシマムリスク」「レプリカント」と、ヴァンダム御用達っぽいリンゴ・ラム。

奥さんを暴漢に殺されてしまった可哀相なアメリカ人技師のヴァンダムは、失意のまま恐ろしい刑務所に収監されることになってしまいます。
その刑務所では「スバルカ」と呼ばれる囚人同士がタイマンで殺し合いをする賭けゲームが大流行、刑務所長たちは囚人が死んでゆくのを笑ってみているような有様でした。
うーむ、何だか、ジェイソン・ステイサム版「デスレース」みたいな出だしですね。

普通の一般人なヴァンダムは、密かに持ち込んだ奥さんの水着写真だけを心の拠りどころにして、厳しい環境を耐えようとします。
しかし、屈強なロシアンマフィアに目をつけられ、看守を買収しようにも「アメリカ人は割高だ」などとけんもほろろな四面楚歌状態。
絶えず汚水が流れてくる懲罰房に何度もいれられ、段々と気が違ってきてしまうヴァンダム。
いつしかヴァンダムは身体を鍛えぬき、スバルカで勝ち抜くような「(キチガイ)戦士」に成長していたりしてビックリ仰天!
その風貌はまるで仙人!
髪もヒゲもボーボーのヴァンダム!
闘い続けているうちに、いつか刑務所を出たいという希望も持たなくなったヴァンダムは、今度はオールバックにチョイ顎鬚という、どこからどう見てもヤクザチックなスタイルに変身!
刑務所内を肩で風をきって歩くような、いっぱしのワルに成長を遂げてしまって、またまた仰天!

でも、ロシアンマフィアに嫌々オカマを掘られていた若い兄ちゃんの「自分を見失ってはいけない」の一言で改心したヴァンダムは、以後、いきなりの「もう闘わない」宣言!
闘わせようとする看守に反抗して縛り上げられたヴァンダムの姿に、これまた唐突に感化されてゆく囚人たち。
このまま殺してしまえばヴァンダムは「殉教者」として囚人たちに崇められてしまうと危惧した所長は、懲罰房で「飼って」いる巨漢の大男とヴァンダムに「スパルカ」を行わせて、「結局は闘わざるおえなかった男」としてヴァンダムを葬り去ろうと画策するのですが・・・・・


いやいや、本作のヴァンダムは演技派転向って感じで、アクションも披露はするものの、いつものキックや股割りのヴァンダミングアクションは封印、子供じみたアクション映画スターじゃないところを一発みせてやろうじゃないか!という気概にあふれております。
というか、あふれかえってしまっていて、観ていてこちらが恥ずかしくなってしまうような気もしますが(苦笑)。
絶望するヴァンダム、獣のように咆哮するヴァンダム、敵の首を噛みちぎるヴァンダム、奥さんとプールや森ではしゃぐヴァンダム、首つって死のうとするヴァンダム・・・・・実に様々な、今までの作品ではあまり見せなかった一面を次々と繰り出してくる、まさにアクターとしてのヴァンダム、つまりヴァンダクターな映画になっており、新たなヴァンダムの魅力が開花してしまっているんですね、これが。

それが良いのかどうかは別として、なかなか興味深い映画ではあります。
死んだ奥さんが話しかけてくる幻想的な場面や、旅行していたらハメをはずしすぎて収監され、おケツを貸し続ける日々になってしまった兄ちゃんや、ずっと懲罰房で唸っている覆面の大男との友情や意外な関係性など、アクション一辺倒だったヴァンダム映画を次のステージに導くかのような、ちゃんとしたドラマやキャラクターが用意されている渋みのある出来栄えです。
明朗快活なヴァンダミングアクションを期待すると肩透かしもいいところでしょうけれど、これはこれで見応えがあって良かったです。
・・・・・と、誉めちぎりたいのはヤマヤマなのですが、そこはそれ、ヴァンダム映画なんで(苦笑)。
97分の尺なんですけど、とにかく物語が動き出すまでが長くてかったるい。
それでいて、いよいよ大きく動き出したらと思ったら、すべてが唐突で性急というか、すごい勢いで脱獄する話になっちゃって、スピード感があって良いなどと誉めている場合ではないほど、残り10分で話をまとめちまおうぜみたいな畳み方がかなり強引でした。
確かに、キャッチコピーが「完全脱獄」なんで最後には脱獄するんだろうなとは想像できますが、ほとんど最後の最後までヴァンダムが脱獄を考えたりしないので、そんなキャッチコピーは正直忘れていましたよ!
しかも、軍が請け負っている刑務所なのに、けっこう簡単に脱獄可能なのも腰砕けもいいところ!
あと5分、尺がふえてもいいからもう少しクライマックスに緊張感が欲しかったですな。

ヴァンダムがいつの間にか囚人たちのヒーローになる展開も、それまで「スパルカ」で大騒ぎしまくっていた囚人たちが、突然に闘いをやめたヴァンダムにどうしてすぐに感化されるのか?
そこにまるで説得力がないのもどうかと思いました。

しかし、そんなことより、本作最大のハテナマークは、何といってもヴァンダムと同房になる囚人451の存在であります!
何やら、冒頭から「人間は人生を演じている」とか何とか、哲学的な語りでこちらを煙に巻き続ける黒人さんなんですけど、この人が一体どういう立場で、何をしたいのかがまったく分からない!
で、それが本作の魅力のひとつだったんですが、だんだんと正体が判明してくるに従って輝きを失うキャラクターだったのが残念。
邪魔な囚人を抹殺する役目らしいのに何故かヴァンダムを放置プレイしたり、「何考えているのかわからんから怖い」ところが良かったのに、終盤では目覚ましい大活躍をしたり、割とどうでもいい過去があかされたり、はっきり言って主人公のヴァンダムより気になって仕方がなかったのに結局はよくいる必殺仕事人みたいなキャラだったんで少し萎えましたよ。
これなら終始、善なのか悪なのか分からない謎のキャラのままで押し通してほしかった。
ヴァンダムがすぐそばでウンコしているのに、気にしないで眠れる豪胆さは好きですけどね!

総評すると、つまらないわけではない映画ですが、そこまで優れた映画でもないという、実に中途半端なヴァンダムービーってところでしょうか。
ちゃんとケリがつくラストは後味はよろしいかと。
石器時代ルックスのヴァンダムが野蛮に暴れまわったり、かと思うと飛んできた蛾に話しかけるようなさびしんぼうヴァンダムがみられるという部分では必見かもしれません。

ちなみに、DVDの特典にはいっているテレビ用スポットCMが、セクシー衣装の杉本彩が椅子に縛られてたまま、「かんぜんだつごく♡」などと色っぽく呟いちゃったりするもので、本編よりも満足できたのは内緒です!


セルDVDにて

• #週末はヴァンダム!
• #ヴァンダム七変化!
• #俺様は演技もちゃんとできるんだぜ!
• #ロシアvsアメリカ
• #ロシア旅行もほどほどに

基本的には超名作『ショーシャンクの空に』をなぞった監獄映画ではあるものの、上手い具合にヴァンダム仕様にアレンジされた展開や容赦無いハードな描写も相まってヴァンダム映画の中でも忘れ難く味わい深い、異色作にして隠れた名作とも思える作品です🙌

心の安らぎを広めて囚人たちの英雄になる『ショーシャンク』とは違い、本作でのヴァンダムは「漢の強さ」を見せつけることによって囚人たちの英雄になっていきます。監獄内で行われる囚人同士の殺し合いに身を投じていき徐々に狂戦士に変貌していく「強靭な肉体」を見せつけるパートも、その後真の勝利を目指して看守からの理不尽な仕打ちに耐える「鋼の精神」を見せつけるパートも、一貫してヴァンダムが持つ「漢の強さ」を見せつける上手い描写だったと思います。またここで「闘技場でのタイマン対決」という、いかにもヴァンダムらしいバトル設定が取り入れられているのもお見事でした👏

もちろん本作において格闘はあくまで添え物であって、メインは完全にドラマパートです。正直ここまで追い詰められて泥臭いヴァンダムを見たのは初めてだったのですが、こういう時の哀愁たっぷりなヴァンダムってめっちゃいい味を出すんですよね🥺

肝心の終盤の展開が早足すぎて勿体無かったり、キーパーソンである囚人仲間が態度の割にあまり活躍していない気がするのが引っ掛かったり、詰めの甘さも感じる作品ではあるのですがそれでも十分に見応えがありました。様々なビジュアルのヴァンダムが見れるという隠し味も込みでとてもオススメな作品です✨

序盤の展開から刑務所に入るまでと、ヴァンダムが主演ということでまたB級ものかと思いきや今回は普通の男を演じている。

筋骨隆々の囚人との対決では、ヴァンダムが弱い姿が見れる。
ヴァンダムファンなら悲鳴上げそう(笑)

ところが一転友情が生まれてくるとドラマな展開に突入。
署長の思うがままの刑務所。抵抗するためにヴァンダムが取った仰天の行動。

独房の中の壁でのやり取りや、トレーニング風景など伏線もうまく作られており所々入るナレーションもうまい表現。
ヴァンダム映画らしからぬ意外な面白さでした(笑)