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ソウルフル・ワールドのCucumPrincessのレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
5.0
10/24 明日の準備をするために印刷室にこもっていたら帰り際の副校長に「今日はありがとうね〜」と言われて「いや、何もしてません......」と返したら「いるだけで、いいんだよ!」とその場を去りながら言われた。呆然と立ち尽くして、ちょっと泣いた。その一言が頭の中でぐるぐるしている。「いた方がいい」じゃなくて「いるだけでいい」。今年1番の救いの言葉になった。

昨年の4月から付け始めた備忘録に残っていたある日の話。自分の存在を認められずにいた社会人1年目のひとコマ。存在丸ごと肯定してくれるみたいなこの言葉に、ずっと救われている。

生きていれば上手くいかない日もあって、自分なんてと責めてしまう日ばかりで、人に優しくなれなくて、呼吸すらしんどくて、何のために生きているのかわからなくて、絶望ばかりで、他の人に追い越されるのが怖くて、必要とされたくて。でも、あなたも私もいるだけで良いんだよ。生きているだけで良いんだよ。生きているだけで大成功なんだ、生きるってきっと素晴らしいことなんだ。

空を見上げてみようと思う。風に吹かれてみようと思う。雨に打たれたい、怒られたい、失敗したい。そしてちょっと泣いて、美味しいものを食べて。たまに、生きていて良かったと思える瞬間や出会いに恵まれたり。
この映画に出会ってから3年、遂に映画館で観ることができました。先生になりたいと思っていたその頃は、キラメキに取り憑かれ、自分の才能を過信していたJoeのようだった。そして、教師になれた去年の私は海を探し求める若い魚。今は自分を自分で傷つける22のようだ。

映画館から出られないほど号泣したけれど、何故かこの映画を観た後はいつも清々しい。力強く立って、自分の足で大地を踏む喜びを忘れずに、生きていこうと思い直せるのだ。

素敵な言葉をくれた副校長は今年度異動してしまった。あの日のことを手紙に書いて渡したら、最終日に「いるだけで良いんだよ、でもただボーっと立ってろってことじゃないからね!」といたずら顔で笑われた。副校長先生、どこかでまた会ってください。
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