Drエメット

ソウルフル・ワールドのDrエメットのレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
4.6
配信で一回みたことあって、劇場で再鑑賞。
素晴らしかった。ディズニーで1番好きかも。
人生について捉えなおし、生きる意味ではなく、生きている瞬間のきらめきを感じることを映像で見せてくれる作品。

直前でニーチェの入門書をたまたま読んでたんだけど、本作の内容はまさにニーチェの哲学を映像化したような内容だった。

人生の意味や目標を設定する危険性が本作では3パターンが描かれていると思う。
ジョーはジャズに惹かれ、ジャズこそが生きる意味だと考えていた。
夢が叶わずに死んでしまった最初の人生では、ジャズプレイヤーになれなかった人生は無価値であると考えてしまった。
夢が叶い、カルテットの一員として認められた人生では、夢が叶った後想像していた気分にはならなかった、というセリフがある。これは燃え尽き症候群的な感じで、夢が叶ってしまった後に人生の目標を失ってしまうという姿が描かれていた。
また、22番は自分の人生の意味を見つけたいが見つけられない人として描かれている。
彼女はジョーの身体で過ごすうちに、生きること自体の楽しさを感じる。しかし、ジョーに「そんなものは人生の意味じゃない、ただの生活だ」と言われてしまい、迷子の魂になってしまう。
映画の最後では、22番がこのときに感じた生きること自体の楽しさこそがきらめきだとわかる。人生を何かの目的のために過ごすのではなく、人生自体を楽しむ。これがニーチェのいう超人なのかなと思う。
夢を持つことは悪いことではない。でも夢を持たなければならない、というのは違うのではないか。そもそも人生に意味なんてない。意味のない人生をどう生きるのかを考えなければならない。

ソウルと身体本体が分かれているという表現は、実在している身体と認識している主体としての魂は別にあることを表現しているようにとれる。
「地上では困るかもしれないですが、それは地上の問題です」というセリフがある。地上の問題なのでソウルには関係ありません、という意味。これは仏教の悟りに近いと思う。この世のあらゆる問題は、この世(肉体)の問題であって、我々の魂を直接傷つけることはできない。

映像表現としても素晴らしかった。
現実からソウルの世界に落ちていくシーンでの、カラフルな映像からのモノクロになるところとか。
神のような存在であるジェリーやテリーはキュビズム的な画風で描かれる。
キュビズムは、三次元のものを多方面から見て分解し、二次元に落とし込んだものである。ジェリーやテリーは、高次元の存在が人間の認識しやすい形でキャラクター化したものなので、この「次元を落とす」という処理という意味でキュビズム的に描かれているのかなと思った。

人生の美しさを感じる映画でした。
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