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ソウルフル・ワールドのrensaurusのレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
4.7
夢を追うことは素晴らしいことだが、それは生きる目的にはならないということ。また、何でもないような生活の一瞬一瞬や、他人の人生と関わる体験の連続こそが人生そのものであり、自分の人生の一瞬一瞬を心から味わおうというかけがえのないメッセージを、説教臭さも感じさせず、暖かい光に包み込んでくれるように伝えてくれる作品だった。

自分の魂を喜ばせる『きらめき』を求めることの素晴らしさを伝える一方で、それに執着し、中毒症状のように依存してしまうと、生きる亡霊のように魂が死んでしまうという描写にはハッとさせられる。人生を賭けたいと思える夢は、反面、生きることの醍醐味を忘れさせてしまうものでもあるのだ。夢が「こうしなければ」という強迫観念になっていないか。夢以外のことを疎かにしていないか。それに、いざその夢が叶ったとき、自分の想像していた理想像とのギャップに苦しむかも知れない。もしくは、夢が叶わず道を逸れた先に思わぬ幸せが見つかるかも知れない。人生と夢の一筋縄ではいかない関係がリアルに描かれていた。

また、好きなことややりたいことが無くても、生きているということ自体に価値があるという原初的な気付きをも添えてくれる展開になり、自分は実は素晴らしい世界に生きているのかも知れないと、希望の光が灯るような感覚さえ得られた。「〜のために生きている」「〜をしているから価値がある」という言葉に捉われる必要はないのだ。

この幾重もの強烈なメッセージに通底するのは、魂で生きろということだ。自分がどう思うのか、どうしたいのかということに、きちんと耳を傾ける。ジャズの即興演奏のようにと言うと格好付け過ぎるが、文脈や感情の動きから‘今’を味わう姿勢はまさしくである。
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