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ソウルフル・ワールドのプレコップのネタバレレビュー・内容・結末

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

「モンスターズインク」、「ウォーリー」、「インサイド・ヘッド」……ピートドクターによるピクサー作品はどれも、複雑で難解だが魅力的な設定をベースとしたものである。その上で、どの作品もその設定を序盤のうちに、セリフではない方法も駆使して伝えていく。結果、小難しいプロットであるはずの作品もエンターテイメントとして最大限楽しめる上に奥深い、最高峰のアニメーション作品になっていた。

今作も例に漏れず、設定は非常に難解である。肉体と切り離された精神世界では感覚を持たない。ここでは生まれる前と死んだ後の魂が存在している。死んだ後は天界へのゲートとしての役割しかない一方で生まれる前の魂は性格を身につけていき、その最後の一つとして煌めきを見出し、メンターはそれを手伝う……。
こんな設定を思いつくのもとんでもないのに、それをCGアニメーションで、子どもでもわかりやすく、なおかつ笑えるように作っている。ピクサーが世界最高峰のアニメーションスタジオであることを序盤のうちに見せつけている。言わずもがな、進化がとどまるところを知らないアニメーション技術も含めて、ピクサーとして、アニメーション作品として、そして映画として歴史上に残る作品であることは間違いない。

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この作品はハッピーエンドのように見えるが、実際は結論を明確にしていない。特に、「ソウルの世界」の描き方はかなり形式的なところを強調して、残酷である。気まぐれで性格を決めたり、出来が悪い、または反抗的なソウルには偉人メンターまでつけて「教育」する。そもそも個性を養うための場所なのに無個性でシンプルな世界観にも、この異世界への違和感が見て取れる。なにより、ここで煌めきを見つけたはずの人々の地下鉄での表情、そして、地球通行書を持った22番がその後どうなったか………
作り手はこの世界を肯定的に描いていない。むしろこのような場所での作られた正しさを否定して、自分の感覚を信じるように促している。と解釈している。

賛否どちらにしても、最も語り合いたくなる映画であるのは間違いないので、もっと早く観ておけばよかった。細部の分析や制作・公開の経緯も含め、この作品の意義は確実に後世まで残る。

マイナスポイントは、やはりジョーの人としてのストーリーの軽さとジャズ描写の少なさ。ストーリーとしてはジョーの背景が軽くなっていて思ったほどカタルシスがなかったのが残念。そして、ジャズに関して、ジョーのプレイの何がドロシアの心を動かしたのか、音楽の感覚的なもの以上の説得力があればよかった。
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