dieBananaSuki

ソウルフル・ワールドのdieBananaSukiのネタバレレビュー・内容・結末

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

本作は最後のセリフ、足元に気をつけてねで全て説明できるんじゃないかと思う。
足元というのは当然のこと、つまり私たちやあなた、私たちやあなたが生きるこの世界のこと。驚きと奇跡に満ちた世界のこと。日々の忙しくて余裕がなくなったり、生きている中で当たり前となりすぎて顧みられなくなったり、私らしくとか生きがいとか好きなことで生きるのようなキラキラしている錯覚によって蔑ろにされている当たり前のこと。私がこのようにあることや、両親のもとに生まれたことも、夕日の美しさも、自然の雄大さも同じく奇跡だ。どうしてそのようにあるか、もっともらしい理屈はわかるかもしれないけど、本当のところはわからないのに成立していることは奇跡というほかないでしょう。でも私たちはそのありがたみがわからなくなってしまう。だから作り出されたキラキラしたものに、ありがたみを感じて、今を蔑ろにしてしまう。だから、本作は生まれる前の魂の視点を通過して、世界の新鮮さを見せる。主人公と同じように、私たちも見過ごしていたものを思い出す。そしてそこに幸福を見出す。
私は若造だが、そんな自分でも今の時代は無限に欲望を煽られ、作られたキラキラに踊らされ、優れた人が可視化され劣等感で心を掻きむしられるから辛いと思う。だから、持っていないものを求めて、すでに持っているものを見過ごしてしまう。
そんな私たちにビンタを喰らわして、目を覚まさせるのが本作だ。いい映画だと思う。テーマも世界観も好きだ。光文社新訳古典文庫の表紙みたいな人たちのビジュアルなんかすごく抽象的で面白かった。
ただお話がすごく面白いわけではない。