きっど

ソウルフル・ワールドのきっどのレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
4.8
トイストーリー4大号泣勢なのでこの手の話に弱いけど、この映画もじんときました。

みんな生きる意味、知りたくない?

雑誌現代思想の特集号で、人生の意味の哲学、という回があって。そこで「生きる意味」と「これが生きる意味だと感じさせるようなもの」を区別して考えるべき、という指摘が印象に残っていた。この映画の主張はまさに同じだと思う。

残念ながら、生きる意味(=普遍的な解)はない。というか制御不可能である。けれど、生きる意味だと感じさせるもの(=瞬間瞬間の個別解)は、制御可能なのだと思う。両者は次元が異なる話で、本来は区別しなければならないけど、主人公のように混同してしまう人も多い。だから、天職を求めるし、人生最愛の人を求める。それはいざ得てみれば、こんなはずじゃなかったと失望するかもしれない。それは無理もない。なぜならそれはある瞬間の条件下においてそう感じられたというスナップショットであり、一本の映画ではないから。最初から最後まで共通するアクターは、実は自分自身しかいない。

だから、人生は無意味だ、と言ってみることにも効力はない。
それは例えば、新展開を迎えた漫画のキャラクターが、「この漫画これから先どうなっちゃうの?」とメタ的なセリフを吐くのに近い。人生は無意味だと分かったように嘆いてみても、それはどこまでもキャラのセリフであり、漫画家にはなれないのだ。

と、抽象的な話をしたところで、感想に戻ると、とことん大人向け映画だなぁと思った。病んで闇堕ちしているまっくろくろすけの正体がファンドマネージャーだったくだりとか笑ってしまった。
この映画の主な主張になっている「ファストアンドフロー」「マインドフルネス」といった、一瞬一瞬を生きよう系の自己啓発はすでに乱立していて、そんなことはわかったうえで、多忙で情報量が多い日々の中でやりきるのが難しいんだよなぁと、堂々巡りをしてしまうんだけど。

それでも、この映画を観たあとの帰り道の風景は少し鮮明に見える。まさに心のマッサージ。ピクサーバンザイ!
きっど

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