ひでG

ソウルフル・ワールドのひでGのレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
4.2
僕は「インサイドヘッド」が大好きです。
人間の頭の中の感情という無形のものをキャラクターにし、スリリングなエンタメとしても成立させ、しかもひとりの少女の成長とそれを支える家族の感動のドラマに仕立てた、「トイストーリー」シリーズや
「ズートピア」と並ぶピクサーサイコーの作品だと思っています。
今年、そのパート2がやってきます。今からとっても楽しみです。

さて、「インサイド〜」のピート・ドクター監督が2020年に配信作品として撮った本作。
何人かの方々のご推薦もあり、日曜の⒎50スタートという超朝一上映に行って来ました。(そんな早い回なのに結構入っていました。今週で終わりは勿体無い💦)

インサイドヘッドは、感情をキャラクターにしましたが、今回はさらに難しい!
生まれる前にどんな人間になるかを決める魂(ソウル)たちが集まる世界が舞台。

ジャズ奏者になることが長年の夢である中学校の音楽教師ジョーに思いがけないビッグチャンスが舞い込んできたその日に、
マンホールに落ちて死んでしまう。

彼がたどり着いたのは、目的が見つけられず人間になることを拒んでいる22番のソウルと出会います。

ソウルの世界?の映像は煌びやかで、神秘的で、コミカルで、それを見ているだけで
ピクサーを見てる〜!という満足感に浸れます。長い階段の先の果てしなく広がる闇は、あっちの世界です。
ここでのキャラクターはどれも個性的で素晴らしいのですが、「インサイドヘッド」に比べると、ややそこでのルールなどが難しく、序盤はまだ少し乗り切れませんでした。

今書きながら頭を整理してみると、人生が終わったのに、どうしても生き返りたいジョーと、これから始まる人生に希望が持てずに生まれることに躊躇している22番。
人生の終わりと始まりのこのペアがすごい発想だなって感心しちゃいます。

でも、この映画、本当の凄さ、巧さはここから。
やや、ネタバレも懸念させるので、大きく改行しますね。








こっち側に戻った2人。でも、22番がジョーの体に、ジョーは猫の体になってしまいます。(心と体が入れ替わる)
このことで、動く絵、アニメーションとしても、物語としても、ムーブメントが起きるのです。
この世での経験がないソウルが操るジョーの体のおかしさ、何度か見せてくれるぎこちないジョーと猫(本物のジョー)の追っかけのスピード感、
果たして、今夜の演奏に間に合うのかというハラハラ感。
まるで北海道の花の開花みたいに一気に映画が花開いていきます。

そして、ここが一番の見せ場なのですが、
ジョーは猫として、客観的に自分の今までの姿と対峙し、見つめることになります。

夢を追い、破れ、価値のないものだと思っていた自分の今までの人生が実は素晴らしい日々だったことに気付かされます。

これって、あの往年の名作「素晴らしき哉、人生!」なんですね!!

22番が感じた「ジャズる」こと。それは
ビザを食べ、おまけのチケットを余分にもらい、床屋で世間話をし、ちょっとだけ今の仕事で良いことがあり、、
そんな一瞬一瞬の煌めきだと、違うソウルの自分から見つけることができたのです。

夢か現実か、この映画はその二者択一に答えを出していません。どちらも否定していません。
とてもとても上手い設定の、とてもとても上手いオチの付け方だと思いました。

僕自身も長年やってきた仕事に対して、激しい嫌悪感を抱に出している今、
この映画に出逢うして出逢ったような気さえします。
「ジャズる」一瞬に喜びを見い出せるように、映画の中の仲間たちのように歩んでいきたいです。
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