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ソウルフル・ワールドのOGAのレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
5.0
追わずとも、探さずとも、
幸せが実る種はそこらじゅうに植わっている。
そのことに気づいたとき、それらを大切なものと思えたとき、
その種は花を咲かせ、世界は幸せに満ち溢れた花畑へと変化する。

家族、大好きなあの子、ともだち、何気ない会話、ある日の腹ペコの時の一口目のカレー、夜寝たら来る朝。
今、自分が人生で持っているものを大切に抱きしめたくなる物語。

なんのために生きるのか。
自分がそれだと信じる人生の意味に日々を燃やす人、
生きる意味を見つけることに苦労して、不安と悩みを迷える日々で肥やす人たちすべてに向けて生き方についてのひとつの大きな提案をしてくれる作品。

音楽が自分の生きる意味だと信じる音楽教師ジョーが、プロのジャズピアニストとして成功すべく奮闘する姿を中心に物語が展開され、同時に彼の周りにいる人々の人生も描かれる。

きっと多くの人がそれぞれの人生で一度はジョーを経験するんだろう。
何者かになりたい。
自分の大好きなことで大きいことを成し遂げたい。

だからこそ観ている人は主人公のジョーの視点から色んな人の人生を見つめたり、はたまたジョーの言葉を映画の観客として、他人として見つめたりすることができる。

そしてそれぞれの登場人物の何気ない言葉や行動、姿が作品の提示する「生きる意味」に対する答えのヒントになっていることはとても印象的だった。

この作品を観て、前に沖縄のあるゲストハウスのオーナーの模合に連れて行ってもらったときの帰り際、仲間たちのはしゃぐ姿をみながら、「こんな感じでいいんですよ」って言ってたのを思い出した。
彼の真意はわからないけど(まあまあ酔っていたし)、「楽しく過ごせる日常があるだけで人生幸せなんだよ」ってことだったんだと勝手に思ってて、そしてそれはたぶんそういう意味で言ったんだと思う。

生き方に正解なんてないし、彼の言葉を呑み込みきれない自分もいるけど、
でも、人生ってきっと、そういうものでもあるんだろう。

作中の映像は、作品の「生きる意味」の答えを強く観客に思い出させる本当に美しいもの。
晴れの日の木漏れ日、大切な人と眺める海。帰りの電車から見える夕日、赤らむ木の葉。
それ以外にも細部にまでこだわった映像美、アニメーションは圧巻だった。ネコのコミカルな動き、ニットのテクスチャ、たくさんの練習で錆びたトロンボーン、楽器を演奏する手の滑らかな動き、身体の動き。

自分みたいに人生の意味に悩みながら生きるすべての人見てほしい大切な作品。
ディズニープラスだけではなく、いつか劇場で公開してくれて、もっとたくさんの人に届きますように。
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