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次の停車駅のdm10foreverのレビュー・感想・評価

次の停車駅(2017年製作の映画)
3.8
【1+1=2】

結局、人間は皆「1人」だ。
どんなに美しくても、どんなに素敵な声をしていても、自分を形成する単位は「1人」でしかない。

そして、その「1人」と別の「1人」が出会って、初めて「2人」になる。
それは偶然かもしれないし運命かもしれない。
でも、そうやって人間は関係の足し算や引き算をしながら生きていく。

――路線バスの車内アナウンスの声を担当するルースは「1人」だった。
自分はみんなに「話しかけて」いるのに、誰も自分に気がついていない。

「今年は雪が多いと思う?」

勇気を持って話しかけても返事すらしてもらえない。
まるで自分は「透明人間」かのような孤独感・・・。
真新しい靴を履いておしゃれをしても、誰も気がついてくれない・・・。

でも、世の中は皆「1人」の集まりだ。
偶然の出会いは自分にだけ用意されているわけではなく、相手にだって同じ事が言えるのかもしれない。
ひょんなことからバスの中で話しかけてくれたご婦人との出会いは、彼女の居場所の座標を示してくれた。

(あなたはひとりじゃない)

ラストの彼女の笑顔が最高に素敵だった。

(余談)

劇中、彼女のカウンセリングを担当していた医師が女性患者へのセクハラで逮捕されたというニュースが流れる。

ルースは犯罪に遭わなかったわけだから、本来なら胸を撫でおろすところではあるんだけど、何故か浮かない顔をするルース。
最初はてっきり「え?あの先生が?信じられない・・・」的な顔なのかなって思ったけど、結構その後も「曇った表情」と「ニュースの続報」を引っ張ったよね。

最初は物語の中での位置づけがよくわからなかったんだけど、繰り返し「複数の患者に対し~」って言っていたことを考えると、むしろ「でもルースをそういう対象としてみていなかった」っていうことを遠まわしに表した表現だったのかなって。

これって、勿論セクハラが許されないのは大前提だとしてね、確信犯的に複数の女性をターゲットにするワルい奴すらも自分を気にもかけないのか・・・っていうのは、彼女のような精神状況の人には辛いニュースだったのかもしれないなと感じた。

そうやって「疎外感」「孤独感」っていうのは、他人が気がつかないところでどんどん増幅してしまうものなのかもしれないね。
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