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次の停車駅のRのレビュー・感想・評価

次の停車駅(2017年製作の映画)
3.9
BSSTOのあらすじに「人生のターニングポイント」というワードが見えて、つい気になって鑑賞。
言葉に残しておきたいことが多く、上映時間にレビューの文字数が見合わないかもしれない。笑

■「自分の存在意義を感じていたい」
私は自己投影できる映画に惹かれやすいことを自覚しているが、まさにドンピシャな台詞がとうとう御目見えしてしまった。就職活動中ずっとこれベースの自己分析してた。
ここでよく引き合いに出すのはやはり昨今のホットトピック、ソーシャルメディアなんだけれど、良くも悪くも容易に人との比較が叶ってしまう現代、個性のコモディティ化が進行しすぎて、自分のアイデンティティを見失ってしまうことって、ある。
だからこそ、着飾らないシンプルな言葉でぽつっと出たこの台詞が私に大きな影を落としていった。

■対立する事象、皮肉の効いた展開
本作品にて相反する事象が3つあったように思う。

i) 「存在意義を感じたいルース」と「代替財としてのルース」
前述の通り、ルースは明確に自己の存在への肯定感を欲している。その一方で、車内アナウンスの仕事では、この仕事は君じゃなくても務まると言わんばかりに名前を間違われる始末。
ビジネスにおける名前を間違えるという行為は、相手がその人である必然性がないということ。これは自分自身をしっかり認識してほしいという思いを持つ彼女にとっては、なかなか屈辱的だったはず。

ii) 「代替財としてのルース」と「存在を認識されたルース」
アナウンサーはいくらでも代わりがいると感じたルースだったけれど、ここからは救いだった。
バス車内で彼女は「あなたの声が好き」という言葉をかけられる。このセリフがターニングポイントだと、私は思っている。
「あなたの声」はルースにしか持ちえない価値かつ武器。最強の仕事道具なのだ。自分自身が仕事道具である人間としては、最上級の賞賛ではないだろうか。
それにしても、バスのシーンほっこりしすぎた。

iii) 「次回の診察で人と交わした会話をカウンセラーに伝えること」と「いなくなったカウンセラーが会話のネタになったこと」
これは想定外の展開だったし、いいアイロニー。
刑務所に行って「あなたのニュースが会話のタネになりました」と皮肉ってやらなければならない。実際そうだしね。

■一方通行な会話たち
これは監督の意図するところなのかは分かりかねるけど、バス乗車までは、ルースが人と会話のキャッチボールをしているシーンが描かれない。(唯一カウンセラーとは会話している)
まさにこれが「自分と認識されていない」ことなのかなと思ったり。
自己の肉体だけ存在していて、精神的な充足はそこになくて、言葉をかけられても自分を避けてすーっと素通りされる感じ。
この解釈は本当に個人的なものだから書くのも迷ったくらいだけど、備忘録のレビューだし、書いておく。

そういえば、韓国語の先生も地下鉄のアナウンスしてるって言ってたな。ふと思い出した。
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