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向かいの窓のOtoのレビュー・感想・評価

向かいの窓(2019年製作の映画)
4.0
短編の勉強として、アカデミー短編実写賞から鑑賞。
→ https://vimeo.com/376861194 (英字幕付き)

テーマは簡単に言えば「隣の芝生は青い」で、7分辺りと14分辺りの無音や音楽バックの双眼鏡視点と、ラストカットが最もやりたかったことなのだろうと感じた。それを通じて「足るを知る」プロセスを丁寧に描いていて、自分が羨ましいあの人は自分を羨ましがっているというわかりやすい反転構造(夢番地だ...)。あとやはり、額縁(窓や扉)は映画の武器だし自分の好みだと改めて気づいた。

プロットは
・主人公:夫と幼い子供達との日常に不満を抱く妻。
・問題:自宅の窓から若いカップルの自由奔放な生活を除くことで、若さへの羨望と共に、自らや家族への不満が爆発する。
・解消:健康で若さ溢れるカップルも実は大きな問題を抱えていたことを目の当たりにして会いにいくと、自らの家族に憧れていたことを聞かされて今ある生活の大切さに気づかされる。

感情の流れ
・まずop。誰かの生活を覗き見るという非対称性って誰しもドキドキするね...『裏窓』が発祥だろうか、最近だと『よこがお』。
・そして、4~7分辺りの長くて激しい口論で引き込まれる、問題の提示が早い。どんだけ嫌なことが言えるかの大喜利。
・次に音楽を使って、夫ではなく自分が双眼鏡を使ってしまっているというのを自然に見せる。夫が問題を大きくし過ぎないのが短編的。
・10分で自分が憧れていた対象にも問題が見え始める。夫との関係に変化の兆しが見える。
・12~15分で疑いが確信に変わっていくのをたっぷりと見せる。行動のモチベーションを溜めてる。
・16分、我慢できずに窓を超えて会いにいく。すると自分の予想と反して、相手が自分と同じように逆の憧れを抱いていたこと、恵まれた自身の環境に気づかされる。テーマを語らないのが見事、無言のクライマックスというやつ。
・オチ、夫の育児態度の変化と、反対の視点で見つめる妻のラストカット。
・エンドクレジットは環境音。スクロールよりもスライド式に変わる方が雰囲気に合っている。

まずわかりやすさが第一だと再認識。わからない映画はみてられないが、この映画が伏せていることといえば、相手カップルの状況くらい。
実話ベースらしいけど、無理に新しくて斬新なテーマや現代的な表現をやろうとせずに、自分の問題を突き詰めて描くことで普遍性を獲得するのかもしれないと感じた。観る側が勝手に広げてくれるというか。
カット割りも明確で、ステディで動いているカットも多いけど、見せたいものがハッキリしてるし、テーマを掘り下げると見せたい表現は自然と決まってくるのかもしれない。ヒッチコック鑑賞祭りを開催しよう...。


SAVE THE CAT
-第一幕-
①OP:家事に疲れた夫婦、子供を寝かして片付け
②テーマ:隣人のSEXを目撃して険悪に、でも観てしまう。「気づいていないのか、楽しんでるのか」
③セットアップ:二人の子供の育児に非協力的な夫に苛立ち
④きっかけ:隣人を思い出して不満がさらに爆発
⑤:悩み:自分も若さに嫉妬していることを認める
⑥第一:仲直りするが家事に追われるなか隣人が気になる
-第二幕-
⑦サブ:元気だった隣人カップルの様子がおかしいと気づく
⑧お楽しみ:堂々と覗くようになる
⑨ミッド:夫に話すと体調が悪そうだと気づく
⑩悪役:彼氏の方がみるみる衰えて行く
11)どん底:彼氏が死んでしまう
12)暗闇:彼女は悲しみにくれる彼女に会いに行く
13)第二:泣き出してる彼女に話しかける
-第三幕-
14)フィナーレ:彼女も自分たちに嫉妬していたと知って抱きしめる
15)ED:夫の育児態度の変化と反対から見られる側の夫婦。
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