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向かいの窓のQTakaのレビュー・感想・評価

向かいの窓(2019年製作の映画)
3.9
道を隔てて向かい合う窓。
その窓の中にある、それぞれの家族。
互いの存在を窓の向こうに見ながら、何を思うのか。
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3人目の子供をお腹に抱えた妻と夫。
ちょっと倦怠期、子育てに疲れ気味な妻。
そのことにちょっと無頓着な夫。
そんな二人の目に入ってきたのは、向かいのアパートの一室。
若くて美人の女性と若々しい男性のカップル。
広い窓の中に映し出されるのは、幸せそうな二人。
それ以来、その部屋が気になる二人。
或る時、妻が異変に気付く。
どうやら、向かいの男性は大病を患ってしまったようだ。
そして、若いカップルに別れの時が来る。
全てを見てしまった妻がとった行動は。
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意図せずに体が動いてしまったのだろう。
妻は、大切な人を見送る彼女に声をかけてしまう。
ここから、意外な会話が始まる。
彼女は、見送った夫とともに、こちらの夫婦の生活を見ていたのだ。
そして、その子供たちに癒やされていた。
夫ともに、その家庭に、憧れの眼差しを向けていたのだという。
向かいのカップルに羨望の眼差しを向けていた自分たちに、憧れを抱いていたと言うこの言葉に、驚きと涙。
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部屋に戻り、子供たちと一日を過ごした夫を迎える妻。
その心中はいかなるものか。
妻と夫と、3人の子供たち。
その窓が夕闇の中に明るく照らし出される。
その窓を眺める眼差しは…
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カットのほとんどは、夫婦のアパートメントの一室の中。
時折、季節の流れを示すように、街並みが映し出される。
夫婦のアパートメントの窓の向こうには向かいの部屋の窓が見える。
窓越しに見える向かいの部屋と、こちらの家族の部屋の二つが舞台だ。
窓越しに見る向かいの部屋は、折々の様子を見せる。
時に愛し合う姿、時に賑やかなパーティー、そして変化が…
部屋の外、アパートメントの玄関で二人の会話がある。
唯一、屋外のカットだ。
そしてもう一つ、このフィルムで唯一のカットが最後に或る。
それは、家族が住む部屋を窓越しに見るラストカットだ。
その窓越しに見る姿こそが、この映画に見る家族の姿なのだろう。
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このショートフィルムは、数々の賞を受賞し、また多くのアワードにノミネートされていたそうだ。
確かに、これはイイ。
ショートフィルムの面白さ、表現の豊かさを楽しめる。
無駄の無い、大切に撮られたカットが全編を彩る。
見た後で、そのいずれのカットも重要であったことを知る。
ジワジワ来る映画です。
オススメの一本です。
YouTubeで”The Neighbors' Window”を検索してみてください。
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