カテリーナ

私の惑星のカテリーナのレビュー・感想・評価

私の惑星(2018年製作の映画)
3.5
2019年ベルギー製作国の短編映画

パン屋さんを営むヘンリーはポールダンスで鍛えた肉体が美しい妻と暮らしている
いつものように開店の準備をしていると
妻が売り物のパンを床に落としてしまう
妻を慰めようと身体をさするヘンリーの手は下半身の方に下がって行く
あからさまに迷惑顔の妻
「こんな時にやめてよ!」
「いつならいいんだい?」
大きなため息と共に背を向けて店から退出する妻

ヘンリーは妻のアイデンティティをその体型で否定するような おデブちゃん
お腹周りや腰の辺りにはたっぷりと贅肉がぶら下がる
妻にとってはやる事なす事苛立ちを我慢できない状態に陥っている 素直になれなくて常に苛立ちを抱える毎日 結果、
夫婦の営みは寝室が別々なので当然ご無沙汰の様子

このままだと妻との関係は危ういと頭を抱えるヘンリー
グレイに覆われた曇り空の下
ベンチに腰掛け目を閉じる 
「写真を撮っても良いですか?」
女性から声をかけられ返事をする
「良いですよ」
嬉しそうにカメラを構える女性の表情が一瞬くもり こう、注文した
「さっきのポーズにして下さい」

名刺を渡されたヘンリーは
太った体型をバカにされた訳ではなく
本気でモデルを申し込まれた事に
嬉しさを隠せない

ヘンリーはこの事で妻を何とか振り向かせ
熱々だった頃に戻る事ができるかもしれないと思案する

「明日は店をお休みして一緒に出かけて欲しい」
「何故?」
「一緒にいる時間が欲しいんだ」
いつもなら苛立つ妻も心からのヘンリーの
言葉に悪い気はしない

夫に対する複雑な心境を持て余す妻と
自分の存在価値と男としての威厳を取り戻したい夫
海辺の美術館で開催される写真の展覧会で
ヘンリーのサプライズに託された

ラストシーンではグレイ曇り空の下
ビーチに停めた車の
前で夫婦の笑い声が響いていた

ヘンリーの妻への愛情の深さに絆され
『魔女の宅急便』のグーチョキパン店
を想起させるアバンタイトル
キッチンのインテリアが素敵な
作品だった

ショートショート フィルムフェスティバル&アジア 2019インターナショナル部門オーディエンスアワード
カテリーナ

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