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クイーン&スリムの福福吉吉のレビュー・感想・評価

クイーン&スリム(2019年製作の映画)
4.0
◆あらすじ◆
ネットで知り合ったばかりの黒人カップルは車で移動中、白人警官に止められる。高圧的な白人警官の態度に怒った黒人女性(クイーン)が抗議したところ、警官に撃たれてしまう。彼女を守るべく警官ともみ合いとなった黒人男性(スリム)は警官を射殺してしまう。2人はその場を逃亡するが、その事件の映像がSNSに拡散され、2人の心情をよそに、黒人社会で英雄視されていく。

◆感想◆
初めて会ったクイーンとスリムがその当日に白人警官の行動を機に逃避行を続ける姿を描いており、お互いのことをほとんど知らない2人が逃避行を続ける中で結びついていく流れは意外性は無いものの、人種差別の問題を絡めながら興味を持たせる内容になっていました。

クイーン(アンジェラ・ジョンソン)は弁護士で気が強く、主導権を取りたがる人物なのですが、スリムと行動を共にするうちに彼女の本心が明らかになっていき、とても魅力的なキャラクターになりました。

一方、スリム(ダニエル・カルーヤ)はその素性が明らかにならず、普通の男性で事なかれ主義の人物のように感じました。と言ってもそれが度を過ぎたものでなく、本当に普通の考え方だと思います。

白人警官を射殺後、2人はクイーンのツテを辿って逃避行を続けます。警官たちとの緊迫感のあるシーンと2人が人生を謳歌するシーンが交互に構成されていて、観ている側を同じように旅に出ているような雰囲気を醸し出していました。クイーンとスリムは互いに「こんなことしている場合か」と思いながら、一方で生きているうちに人生を謳歌したいという思いに駆られ、歌を聞きながらダンスをしたり、馬に乗ったりと楽しむ姿はとても心に残りました。

そして、2人の逃避行を応援する黒人の人々の姿があり、人種差別が恒常化している世界であることを痛感させられました。本来、正当防衛のはずなのに逃避行することになった2人に躍起になって襲い掛かる白人警官たちと、白人たちの横暴に我慢できない黒人たちの気持ちが現れていました。

2人の心情と根深い人種差別の実態を感じさせてくれる作品となっており、とても面白かったです。

鑑賞日:2023年10月24日
鑑賞方法:ビデオマーケット
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