radioradio526

ベル・エポックでもう一度のradioradio526のレビュー・感想・評価

ベル・エポックでもう一度(2019年製作の映画)
3.8
「ここで…雨が降るはずなんだが…」「降らしてやれ!」

「ベル・エポックでもう一度」鑑賞。

かつて売れっ子のイラストレーターだったヴィクトル。今では仕事もなく、妻のマリアンヌからも見放されてしまった。冴えない毎日を送る父を元気づけようと息子がプレゼントしたのは、友人のアントワープがはじめたタイムトラベルサービス。
映画製作を応用して客の戻りたい過去を広大なセットで再現する体験型のエンタメサービスだ。
「運命の女性と出逢った1974年のリヨンに戻りたい」。
セットにはあの日の全てが蘇っていた。思い出のカフェで女優のマルゴ演じる運命の女性に出逢ったヴィクトル。
幸せだった日々を再体験して、生き甲斐を取り戻すヴィクトルは別荘を売り払ってまで延長料金に注ぎ込む。
だが、ある日マルゴは降板して別の女優が現れる…。

女々しいという言葉は男の為にある言葉である…字面からしても当たり前過ぎる話だ。
それを「男の方がロマンチストだよね」とか「男の方が恋愛を引きずるよね」とか、こねくり回したところで結局は女々しいだけなんだろうな…そう、グジグジと過去に捕らわれ続けるのはおおよそ男性が多い。

デジタルが進んだ現代でアナログな絵描きに居場所は無い…ヴィクトルはアナログ気質をバカにされてマリアンヌにも追い出されてしまう。疲れたおじさんになってもあの頃の輝いていた若き日の恋愛を大切に想い続けていたのに…。
タイムトラベルの渦中で70年代を謳歌することで輝きを取り戻したヴィクトルに少しずつ居場所が出来てきて、周りの目が変わってくる辺りが堪らなく微笑ましい…もともとは偏屈ながら魅力的な男なんだ。
エンディング…タイムトラベルサービスの終焉で登場するのは一番大切な人であるべきだ。

藤子不二雄の短編集とかにこういう未来、つまり作られた世界の中に入って皆が役柄を全うするような話があった気がする(微妙に違うかもしれんが)そう思うと今は既にあの頃の未来なのかもしれない。
radioradio526

radioradio526