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ベル・エポックでもう一度のtomtomのレビュー・感想・評価

ベル・エポックでもう一度(2019年製作の映画)
4.6
80年代に流行り作家だった漫画家のヴィクトルは、新しい時代について行けず、妻にも浮気をされてしまう始末。そんな中、息子の友人から、かつての思い出を映画のセットで再現する「タイムトラベルサービス」の誘いを受け、70年代のリヨンの思い出カフェへと足を踏み入れる。

実際にこんなサービスを提供してくれるのなら、お金は幾らでも惜しまないという富豪は多いのではないだろうか。なんなら冷水を顔に浴びせられるだけの端役でも、自分ならお金を払ってでも参加したい...。自身の思い出の一時を予め提出したプロットに従って追体験できるタイムトラベルサービス。そこで再現されるのは、今は疎遠となりつつある妻とのなりそめのストーリーだ。かつての友人や恋人、亡くなった親の役まで出てくる変態的な再現度に加え、「俳優」と「過去」の両面を行き交う登場人物のリアリティまで、共感と驚きを誘う精巧な作りから、作中のヴィクトル同様、観ている自分も完全に作品の虜になってしまった。

そして、思い出の儚さだけではなく、それが今の現在に続いているのだということを想起させる展開。それでも人は過去に囚われ、過去を思い続けるというまたもう一つの皮肉の効いたメッセージもまた、この映画の魅力であるように思う。俳優役の俳優については全く同じ面々で、別の人の人生についても扱うスピンオフを作ってほしい位、とても好きな映画だった。
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