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万歳!ここは愛の道のKUBOのレビュー・感想・評価

万歳!ここは愛の道(2019年製作の映画)
5.0
【Filmarks には上映予定がアップされていませんが、テアトル新宿でのレイトショーを緊急事態宣言の延長のため2021年4月16日~28日に再延期しました】

見終わって、しばらく放心状態のような感覚に陥った。すごい衝撃を受けた。

私がショックを受けた理由は、主演(?)の福田芽衣さんとは2018年の TAMA NEW WAVE でお会いしていたからだ。本作内でも登場する『チョンティチャ』という作品を監督した福田芽衣さんと、作品についてのお話をし、いっしょに記念写真を撮った。

その福田監督が、それからほんの1ヶ月後に、自殺未遂を繰り返した後、記憶喪失になっていたとは、にわかには信じがたかった。

福田監督と交際していた石井達也(達上)監督が、その福田芽衣と石井達也の2人の暮らしをそのまま映像に残して「映画」にした、赤裸々な愛の記録。

映画を撮る者とは、ここまで自分を曝け出さなければならないのか? 哀しいとこも、汚いとこも、切ないとこも、残酷なとこも、達上監督は全てフィルムに残していく。

自分が愛した人を、それがどんな辛い状況であっても、ありのままにフィルムに残す。普通なら、そんな絵面は公開したくないような、人の目に触れさせたくないような、そんな映像も全て記録していく。

これは愛なのかな? 愛なのだろう。映画バカの愛のカタチ。常人には理解し難い境地ではあるのだが、次第にそのフィルムの世界に引き込まれている自分がいる。

元気な映画作家「福田芽衣」を知る者にとっては辛すぎる映像だが、実は達上監督は本作を「ドキュメンタリー」とは一言も言っていない。福田芽衣の記憶喪失や2人の愛に嘘偽りはないが、達上監督は本作をただのドキュメンタリーにはせず「映画的」な仕掛けを施す。この「仕掛け」をどう受け取るかは人によって変わるところだろうが、私はドキュメンタリーなのか、フィクションなのかわからない、ただただ熱量の高い混沌の中に放り込まれたような気分になった。

もし映画に「芥川賞」があれば、そっちのジャンルに入りそうな、自分の身を斬る、血を流す「私小説」的作品。

映画としての好き嫌いを超越して、圧倒的な衝撃を受けた本作。達上空也監督の思いを受け止めてほしい。

*おそらく評価は★5つか★1つの両極端になるような作品。人は選ぶ。
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