MasaichiYaguchi

万歳!ここは愛の道のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

万歳!ここは愛の道(2019年製作の映画)
3.8
コロナ禍の影響で街中で若いカップルが抱擁したり、キスしているところを見掛けなくなって久しいが、達上空也監督が恋人関係の同様に監督である福田芽衣さんとの日々をセルフドキュメンタリータッチで描いた本作を観ていると、その剥き出しの愛の姿にヒリヒリしたり、自らを顧みてグサグサくるものがある。
達上監督が感じていたであろう、余りに一途な愛による束縛感、息苦しさ、そこから逃避したい気持ちが同性として理解出来るが、女性からすれば、その態度のつれなさや、ましてや他の女性に気を移そうとするならば、身を焦がさんばかりになってしまうと思う。
表現者として繊細で傷付き易い福田さんにとって、表現者として自由で在りたい達上監督との関係は不安定で、精神のバランスを崩してしまうものだったのかもしれない。
はじめは彼女との関係やエキセントリックな部分を記録しようとした達上監督だったが、関係が悪化するに連れて記録することを止めてしまう。
暫くして彼女のところを訪ねてみると、その彼女は最悪だった2年間の記憶を無くしていた。
ここから本作が描きたかったと思われる綺麗事では済まされない愛というもの、そのドロドロとした部分を含む複雑さをドキュメンタリーとフィクションとを行き来しながら浮き彫りにしていく。
恋愛は少女漫画のように、又はハーレクインロマンスようには絶対にいかない。
多かれ少なかれ本作で描かれたような幾つかの修羅場、痴話喧嘩を経て、川原の石ころのように流れていく中で角が取れて丸くなっていくものだと思う。