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ワサップ!のAKNのレビュー・感想・評価

ワサップ!(2005年製作の映画)
3.6
2007年鑑賞。ブログよりコピー。

ラリー・クラーク作品。

ロサンゼルス、サウス・セントラルに暮らすジョナサンは、父親違いの兄エディーら6人の仲間たちとともにスケボーをしバンドの練習をするのが日課。黒人にバカにされようが細身のジーンズでスケボーに乗るスタイルは決して曲げようとしない。ある日、バスでビバリーヒルズにスケートをしに行くがお金持ちの少女達と出会ったことにより、思わぬ事件に巻き込まれてしまう。

サンス・セントラルといえばロス暴動が起きた場所とえいば思い出す人も多いのでは?アメリカでもっとも治安が悪いと言われるこの地域なんだけど、ロサンゼルス国際空港のすぐそばにあります。テレビや雑誌、ハリウッド映画などで出てくるロサンゼルスって開放的でおしゃれなお店があって、と思うかもしれないけど見てすぐわかるほど治安の良さ悪さがとってもはっきりしてる。一本道を越えるだけで雰囲気ががらっと変わるほど。車社会のLAでは高速道路が張り巡らされていて、普段は治安の悪い地域で一般道に下りることはないけれど車に乗っていても危険と言われるサウス・セントラルを含む治安の悪い地域はたくさんあります。

そんな地域に住むジョナサンたちなんだけど、彼らは実際にサウス・セントラルに住む少年達だそうで。彼らが平屋の小さな家に住み(ドアには鉄格子、家の周りは金網)母親はストリップクラブで働いている。こんな危険な地域に住むのは貧しい黒人や南米からの移民が多く、ジョナサンもそんなラティーノの一人。ヒップホップファッションに身を包む黒人達からすればスキニージーンズを履いてスケボーをしバンド活動をする彼らは笑いの的。刃向えば撃ち殺されることも日常茶飯事だからあまり関わらないようにしている。

ある日バスに乗ってビバリーヒルズへと向かう彼ら。スケボーをしているとビバヒルに住むお金持ちの少女と出会い彼女の家へ行くことに。ジョナサンたちの住んでいるところとは比べ物にならないほど大きな家、きれいな町並み。車で30分ほどしか離れていないのに関わらずまるで別世界。少女達の男友達(兄弟?)に見つかり家の塀を越え逃げ出すジョナサンたちだったが、隣家にいた住人に一人が撃たれてしまう。

この映画では2回、銃に撃たれるシーンがあるんだけどとっても対照的。1回目はサウス・セントラルで少年が道を歩いていると突然発砲。頭を撃ち抜かれ即死。2回目はビバリーヒルズでジョナサンたちが逃げているときに住人に打たれるというもの。1回目は治安の悪い地域にはよくある若者同士の抗争かなにかだと思うんだけど、2回目はお金持ちの白人が正当防衛のために起こしたもの。金持ちの彼らに取ったらいくら少年とはいえ自分の敷地にいるはずのない南米系の子供がいても発砲してしまうなんて。映画なのでちょっと極端かなとは思ったんだけど、実際ビバリーヒルズに住む人たちにとって南米の人たちはメイドか最低賃金で働く労働者でしかないんだよね。

同じ監督作品KidsではNYに住む若者達の実態をドキュメンタリー風に撮ってかなり衝撃を受けたことを覚えている。この作品は実際にロサンゼルスに住んでみてわかる貧富の差や、移民問題、犯罪について描かれていてとっても興味深かった。これがロサンゼルスの本当の姿ってことで多くの人に見て欲しいです。決して見ていて気持ちのよい内容とは言えないけどね。

Kidsより衝撃度は低めかな。
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