【足跡】
これも先日観た「桃の缶詰」と似たような「喪失」をテーマにした作品。
どちらも切ないお話ではあるんだけど、何だかこっちのほうが好きと直感的に感じた。
なんだろう・・・「熱」かな。
主人公のさやかは父の事を知らない。
写真家だった父はさやかに会うことなくこの世を去っていた。
父が残したのは出版された写真集と一枚の写真、そして愛用のカメラだけだった。
成長したさやかはそのカメラのファイダーを通して「父の視線の先にあったもの」を追う。
しかし、ファインダー越しではない現実には父の姿はなかった。
父を知らないさやかの寂しさ。
父を知っているからこそ失ったものの大きさに押し潰されそうなママ。
さやかの願いは「何とかお母さんに笑顔になって欲しい」ということ。
そこで、さやかはSNSの「ROBIN」を使って世界中の父の友達に呼びかけることを思いつく。
「ママの為に、パパの写真を送ってもらえませんか?」
程なくして世界中から届く、さやかやママも見たことがなかった「かっこいいパパ」の姿。
世界中で写真を撮りながら現地の人々と交流を持っていたパパ。
それは、それも確かにそこに生きていたパパの足跡を感じる写真の数々だった。
そして、そこに一つの動画ファイルが届く。
開いてみるとそこには、さやかが生まれたまさにその瞬間を現地で知らされたパパが喜びを爆発させている姿だった。
「やった~~!!女の子だ~~~!」
泣きながら叫ぶお父さん。
さやかは、それが初めて父が自分に対して感情を見せてくれた瞬間に感じていた。
確かに短編なので、ところどころ端折ってはいるんだけど、その辺は「親子」っていうのは強いよね。
時間をかけて築き上げた関係性とは別の次元で「繋がった瞬間からどんなに切ろうとしても切れない縁」というものが根底にあって、それだけでお話のベースが出来てしまう。
これは「友達関係」「彼氏、彼女関係」だとどうしても多少の説明が必要になってしまう部分なのかなって感じた。
でも、逆にどんなに切りたくても切れないってのも「親子の縁」であって・・・複雑だよね。
例え会ったことがなくても、お父さんが自分の誕生を泣きながら喜んでくれていたって知ったら、それだけで背中を押されているような気がしてくる。
SNSによって瞬時に世界と繋がることが出来るっていうのも今っぽいなと思った。
世界中の色んなところで愛されたお父さんの存在の大きさが、さやかとママの支えになればいいな・・って。
映像や音楽も美しくて◎。
いろんな意味で優しさと強さを感じた作品でした。