針

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェストの針のレビュー・感想・評価

4.5
セルジオ・レオーネの代表作で観はぐってたもの。やっぱりこの監督は最高でした……。

物語は王道の西部劇。流れ者のガンマンであるハーモニカ(チャールズ・ブロンソン)、どす黒いもくろみを胸に抱いたフランク(ヘンリー・フォンダ)、彼と組んでいる鉄道王のモートン(ガブリエル・フェルゼッティ)、強盗団の首領シャイアン(ジェイソン・ロバーズ)、ニューオーリンズからとある一家に嫁いできたジルという女性(クラウディア・カルディナーレ)の思惑が交錯し、互いに結託したり角逐したりガンアクションしたり、という感じ。
いわゆる〈ドル箱三部作〉(荒野の用心棒、夕陽のガンマン、続・夕陽のガンマン)との大きな違いは、アメリカの西部開拓史をがっちりメインストーリーに組み込んでるところ。これによって時間的・空間的な奥行きが生まれていて、硬派な歴史もの=叙事詩的な感触が生じているように思います(夕陽のギャングたち、ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカと通ずるところ?)。マカロニ・ウェスタンとアメリカ製西部劇の融合っぽい感じ。

冒頭、駅で待つ三人の男のもとにハーモニカがやってきて対峙する一連のシーンからしてもうキレッキレ。たーーーっぷり焦らして高め切った緊張感を一瞬で解放する手さばきがすごくて、あとはそのまま飲まれて観ました。ここに限らず映画全体が撃ち合いの予感による緊張の高まりとその解放を繰り返しながら進んでいきます。一瞬で終わるアクションそのものではなく、その「期待」の過程を役者の演技・音のオンオフ・画面の切り替えなど全部使って魅せていくこの感じがやっぱり最高だなーと。(これは日本の時代劇の決闘とも通じそう)

あとは意外とサスペンス味も強くて、状況がしだいに明らかになっていく面白さもありました。もっとも勢力が多いせいか、エピソードのつなぎが若干分かりづらいというかうまくいってないところがある気はするのと、ドラマはもうちょい盛り上げられそうな気がしないでもない。でもそれらを差し引いてもまーー好きだった。

音楽はエンニオ・モリコーネで、正直そこまでキャッチーな音楽ではないと思ったけど、わりと硬派な雰囲気も併せ持つこの映画には合ってる気がする。それにハーモニカの音色は印象的。

それと〈ドル箱〉の明快極まりないキャスト陣(クリント・イーストウッド、イーライ・ウォラック、リー・ヴァン・クリーフ)と比べるとさすがにこちらは見劣りしちゃうところはあるかな。でも個人的にはそのおかげでちょっといいこともありました。
この映画で何が一番うれしかったかって、自分はイーストウッドもモリコーネも大好きだけど、それ以上にセルジオ・レオーネっていうこの監督の手さばき自体が何より好きなんだなーというのを再確認できたことです。

はからずも?製作時期が『ワイルド・バンチ』とほぼ一緒で、これもまた西部劇へのひとつの挽歌映画なのかなーと思いました。撃ち合いの前の胸の高まりをひさしぶりに感じられてとても楽しかったです。

内容についてのコメントをぶら下げときます。
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