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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェストのjamのレビュー・感想・評価

4.2
どこまでも乾いた大地
薄青い空には羊雲
古びた駅舎に、荒くれ者がやってくる

ああ、古き良き時代の"西部劇"とは。
きっと、こういう雰囲気のものなのだろうな…
始まりから胸の高鳴りが治まらなくて。


拳銃の動きが見えないほどの凄腕ガンマンの
"ハーモニカ"
てっきり彼がこの作品の主人公かと思っていたら。
次々と主役級の人物が登場。
物語が進むにつれて、それぞれにドラマがあり、興味を惹かれたのだけれど。


この作品は。
クラウディア・カルディナーレ演ずる、
元高級娼婦、ジルのお話として受け止めることに。
開拓時代の荒野に、裕福な開拓者の後妻としてやってきたジル。
愛を持って、前妻の子どもたちも全て引き受ける彼女の覚悟は、全員が殺されるという悲劇によって打ち砕かれ。

この殺害の首謀者を探す過程で、ハーモニカや、お尋ね者シャイアンらと知り合い。
殺害したならず者の頭、フランクとの駆け引き。
何故、夫が殺されねばならなかったのか。

そして。
夫がこの地でなし得なかった目的を知った時。
彼女の下した決断とは…


「山猫」の艶やかさに、年齢を重ねた女性の強かさが加わり。
正直に言うと、はじめはクラウディアの灰汁が強すぎて、西部劇のヒロインっぽくないかも…と思って。
ところが、彼女が主役、と捉えると。
この強さが必要だったことが理解できて。


敢えて、脇を固めた、と言わせていただくけれども。
ハーモニカ役のチャールズ・ブロンソンの男臭いけれど、底に見える優しさ。
シャイアン役のジェイソン・ロバーズの飄々とした佇まい。
そして。
フランク役のヘンリー・フォンダの品の良いセクシーさ。

ジルに関わる3人の男性それぞれの魅力が画面から溢れて、溜息が出ました。



デジタルリマスターによって蘇った、画像の美しさと。
荒野の風の音
少し耳障りな風車の軋む音
大地を駆ける蹄の音
線路を建設する荒くれ男たちの賑わい

それらを包み込む
エンニオ・モリコーネの美しすぎる調べ。

生粋の"西部劇"ではないのに。
これぞ"西部劇"という世界を作り上げた、セルジオ・レオーネの心意気。

余白に浸る165分
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