mimitakoyaki

ガリーボーイのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

ガリーボーイ(2018年製作の映画)
3.8
たまたま連続でインド映画を観ましたが、音楽とネットが人生を変えるところや、家父長制批判、ムスリムのインド人という点が、きのう見た「シークレット・スーパースター」と驚くほど共通してました。

インド映画で音楽と言えば、豪華絢爛、煌びやかなフルコーラスの歌と群舞のイメージがありますが、本作はスラム街で生まれたラップですからそんなキラキラ感はなく、これまでの陽気なインド映画とはまた違った雰囲気でした。

インドの格差、貧困も相当で、しかも主人公ムラドの家族はムスリムなので、多分インドでは少数派なのかな。
かなり貧困で最下層という感じでした。
でも同じムスリムででもガールフレンドの方は父親が医者なのでお金持ちで、身分が違うからか内緒で付き合ってるし、今もカースト制があるのか知りませんが、インドでは、親世代の貧困がそのまま子ども世代にも引き継がれ、そこから抜け出せないようです。

それでまた、ムラドの父親が横暴で、妻がいるのに若い女性も一緒に住まわせたり(一夫多妻?)、暴力振るうし、子どもや妻も束縛し、考えや生き方をことごとく否定するんです。
ムラドのガールフレンドの親も、娘をお見合いさせたり、行動を制限したりして、とにかく親の権威が強くて、それに従って生きるべきという考え方なのです。

それに対して、ムラドは、貧困や抑圧による苦しさをラップを作って吐き出しているので、彼にとってラップは自分の心や生き方そのものであり、それを奪うことは誰にもできないし、抑圧に抵抗し自分を貫こうとするんです。

またガールフレンドの方も、かなり気性が荒い女の子なんですが、とにかく強くて、黙って親の言いなりの生き方なんかしたくなくて、彼女もまた抵抗するんです。
こういう闘う女性がかっこよくて好きだし、また彼女がすごく綺麗なんで、とても素敵でした。

スラム街で狭くてボロボロの家に住みながらスマホを使ってるので、この家にWi-Fiあるんかな?とか気になりましたけど、ネットによって自分が生きてる小さな世界の外へと飛び出せ、自分を世界に発信できるって、ほんとに希望だなと思います。
もちろん注目されるだけの才能があってこそですが、少なくとも、今までなら才能があっても貧しさゆえに埋もれていた人も、ちゃんと人の目に触れる可能性があるだけ素晴らしいことだと思います。

これからの世代は、古い価値観に縛られず、誰からも縛られず、自分らしく生きられる時代がくるのかもしれません。

ヒップホップには興味ないけど、ヒンディー語のラップも良かったですし、おもしろかったです。

75
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